授業㉑最終回は、ゲストも交えて発表会!

最後の授業。まず冒頭に個人で授業全体のまとめ

とうとう今日が最後の授業。
半年間かけて「取材」と「探求」を続けてきた生徒たち。「取材内容」をインタビュー記事にしてパソコンに打ち込み、「探求内容」を一枚の模造紙にまとめていきます。その「まとめ」作業も最終段階です。自分自身が、どう感じたか、どう考えたかを紙にまとめていきます。

感じたこと、考えたことは一人一人違うので、グループではなく「個人」でまとめに取り組みます。
自分が「取材」や「探求」を通じてわかったこと、わからなかったことを明らかにしていきます。

「店がなくなったらどうなる?」というテーマを探求した生徒のまとめでは、生徒全員にアンケートを取った結果、「店がなくなると困る、不安だ」という意見が7割、「店がなくても自分でなんとかする」という意見が3割だったとのことです。
「店」への依存度がこんなにも高いということが、「7割」という客観的データで示せたとともに、「店」があることのありがたみ、大切さを痛感したことは、探求を通じたこの生徒の「学び」になっています。

探求テーマをまとめた一枚の模造紙。時間と労力をかけて作り上げたこの模造紙に、一人一人の「想い」を書いていきます。

探求テーマを、取材したゲストの前で発表!

続いては探求テーマについて、全体の前で発表。それぞれの班が探求した内容をみんなに共有します。

そして、発表の時間にはなんと、取材をしたゲスト5人のうち、お2人が登場!
いすみライフスタイル研究所の奥村さんと、吉田外科内科医院の吉田さんです。

まず吉田さんも見守る中、医療の発展について探求したチームが発表します。


次の班がテーマにしたのは、「命はなんのためにあるの?」。

この探求テーマを確かめるために、
「人生とは?」
「亡くなったら魂はどうなるの?」
「心が無くなったら?」
という質問を考えてアンケートを取った結果、「命とは人生」ということがわかったのだとか。

探求を通じて、「生徒一人一人が異なる考えを持っている」という「気づき」があったことが、この班の「学び」となりました。

吉田さんは、「『医療』というテーマを経て、『命とは?』という根本的な問いへの発展させて探求したことに感動した」とおっしゃっていました。

生徒だけでなく、取材を受けたゲスト自身が「気づき」「学び」があるという、相互に「学び合う」時間。
それが、「房総すごい人図鑑」を作るこの授業の素晴らしいところだと、レポーターの私は感じています。

「街の良さ」について探求したこちらの班。自分たちで導き出したその答えは、「みんなが安心できるところ」。

意外と、みんな、いすみが便利だと感じていること。
みんな、いすみ市が好きだということ。

このテーマを探求してわかったことは、生徒たち自身の「いすみ」への愛情でした。
地元への愛情、それは生徒たち自身にとって「うれしい」発見であったと思われます。

いすみを愛し、いすみの活性化に取り組む奥村さんはこうコメントを残しました。

「時間に、気持ちに余裕がある人は、不便さは不便に思わない。」
「街づくりは、人づくり。」
「人が良ければ、街は良くなる。」

いすみを愛している生徒たちが中心になって、いすみの街づくりに取り組めば、いすみは「愛」に溢れた良い街となることでしょう。

探求するのは生徒だけではなく、「みんな」だということ

こちらは、「命に違いはあるのか」というテーマを探求したチーム。

アンケートを実施したり、「命」意味を辞書で調べたりして、たどり着いた答えは、
「命に大小は無い。命はみんな尊い。命に違いは無い。」ということでした。

ここで、「命」というテーマで、取材を受けた助産師の羽鳥さんから届いた、生徒たちへの手紙が読み上げられました。

「命って何?」という問いに戸惑ってしまった。」と、生徒たちからのストレートな質問に戸惑い、考えさせられたそうです。

「助産師にとって、命は守るべきもの。赤ちゃんを、お母さんを支える。命の鼓動が止まってしまえば、命は終わる。赤ちゃんの命の鼓動に耳を傾け、命をつなぐ。」

取材を受けて、助産師とは何なのか?助産師の使命とは?ということについて再認識したといいます。
「命」について探求するのは、きっと、生徒たちだけでなく、取材を受けたゲストであり、授業を支えた私たちサポーターであり、生徒たちと普段から接している岬中学校の先生たちであり、そして、今後ウェブメディア「房総すごい人図鑑」を観るたくさんの人たちです。

すべてのはじまりは、「問い」をつくることから

毎週2時間21回の「房総すごい人づくり」の授業で、地域NPO、医療関係者、料理人、助産師、海外出身の蔵人…様々な背景を持ち、仕事のジャンルも異なる方々への「取材」と、その方々に関連するテーマについての「探求」に取り組んだ生徒たち。

「命とは?」「国とは?」「店とは?」
生徒たちだけでなく、大人たちも頭を抱えるような「問い」の探求は、生徒たちと大人たちとが相互に学び合い、探求し合う機会となりました。

食べ物の問いについて調べていたら古代エジプトの歴史を勉強したこと。
命の大切さについての問いを探求していたら人体の仕組みなど生物学の勉強になったこと。
国についての問いを探求したら、日本や海外の文化に対する興味関心が湧いたこと。

国数英といった「教科」を学ぶこと=勉強と考えがちな私たちですが、世の中に溢れている「問い」の数々について自分の頭で考えること、これこそがきっと「勉強」なんですね。

一番最初の授業を振り返ってみると、授業冒頭に講師の磯木さんから提示されて取り組んだのは、冷蔵庫や信号、時計といった身の回りにある「モノ」はどうやって作られたかという「問い」を探求することでした。

それまで世の中に無かったものは、「問いの探求」を通じて作られていきました。

「食べ物を長持ちさせるには?」という問いからできた「冷蔵庫」、
「遠くま速く楽に行くには?」という問いからできた「車」、
「遠くの人と話すには?」という問いからできた「電話」…

「問い」から生まれた様々なものは、私たちを「幸せ」にし、世の中を「平和」にしてきました。

みんなが楽しく幸せに暮らす平和な世界。
その起点は、「問い」をつくること。

「房総すごい人図鑑」づくりに関わったみんながそのことに気づくことができました。そして、これから「房総すごい人図鑑」(このwebサイト)を見る人たちにもなにか感じてもらえたらうれしいです。

テキスト:椎葉康祐

授業⑳最後まで、とことん問いを「追求」!

前回のおさらい

「房総すごい人図鑑」づくりの授業も残りわずか。取材チームは取材内容を原稿にまとめ、インタビュー記事を完成させた後、それをパソコンに打ち込む作業に入りました。
探求チームは、探求したい「問い」について、その「問い」を確かめる方法としてアンケートを実施。その結果をまとめていました。また、本やインターネットで探求テーマについて調べているチームも。

それぞれのチームが「問い」について探求して、自分なりの考えを模造紙にまとめていきます。

慣れないパソコン操作も徐々に…

先週に引き続き、完成したインタビュー記事をパソコンに打ち込む作業をする取材チーム。慣れないパソコン操作。でも一生懸命打ち込みます。やっていくうちに慣れていくよ!

探求チームはアンケートの集計中

ある班は、「国が1つに良いのかどうか」という質問の回答を、「良い」「悪い」で分けていました。

別の班がまとめている模造紙。こちらは「店とは?」というのが探求テーマです。

ちょっと覗いてみると、お店の衣食住がなくなったら、77%は「死んでしまう」と回答されていました(笑)
思わず笑ってしまいました。お店への依存度がすごいけど、本当に死んでしまうのかな…。

お店を1ヶ所でやるメリットは?

というアンケートに対しては、

「限定感がある」
「人件費が少なくて済む」
「行く所が1か所で済むから楽」

など、的を得た回答がズラリ。

自分たちなりの探求をまとめる

こちらは「命とは?」という探求テーマのチーム。

「命 」「生命 」「生かす 」「生きる 」「寿命 」「死 」「死ぬ」

命についての語句の意味を、辞書で調べていました。一つ一つ、似ているようで違うニュアンスがある。言葉の面白さを、「探求」を通じて感じているようです。

終わらせることを目的にしないで!

「あと1時間で終わらせるぞー」という先生の催促。焦る生徒たち。
「終わるかな…」と心配になると同時に、「終わらせることを一番の目的にしないでほしい」という我々メンバーの思いが重なります。最後までとことん問いを「追求」して、良いものを仕上げてほしいところです。

「今日中に終わらせます!」と宣言する生徒たち。時間が限られているのは確か。

兎にも角にも、来週で「房総すごい人図鑑」の授業は最後。
それぞれのチームで、どのような記事ができるのか。探求した「問い」について、自分たちなりの考えた結果はどう現れるのか。

最終回、お楽しみに!

テキスト:椎葉康祐

授業⑲「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を使う!

前回のおさらい

「房総すごい人図鑑」づくりも大詰め。取材チームは取材内容を原稿にまとめ、インタビュー記事を作成。探求チームは、探求したい「問い」について、その「問い」を確かめる方法を考えていました。

ほかの人たちに尋ねるためにアンケートを作成したり、本やインターネットで調べたり、皆それぞれの方法で、「問い」について探求していました。

「オープン」と「クローズド」の質問

「問い」を探求する上で、多くのチームが「アンケート」を作成してほかの人の意見や考えを集める、という方法を使っています。

そこで、授業の最初に「相手」への質問の仕方、アンケートにおいての「聞き方」で役に立つエッセンスがウォームアップとして行われました。

それが、「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」。

講師の磯木さんが例として、運営メンバーでイラストレーターの清水京子さんに質問をして、生徒に見せていきます。

例えば「クローズドクエスチョン」は、答えが「Yes」「No」で答えられるもの。

「専門学校に行ったらイラストレーターになれますか?」「イラストレーターの仕事は楽しいですか?」

など。

一方、「オープンクエスチョン」は、質問の答えが「Yes」「No」で答えられないもの。

「どんな絵を描いていますか?」「どのようにイラストレーターになりましたか?」

などです。

「オープンクエスチョン」と「クローズドクエスチョン」を頭に入れたら、各チームで作成したアンケートを見直していきます!

どういう聞き方をすると、探求する内容が深まるかな?「問い」に対して、自分たちが考えた「答え」が導きだせるかな?と考えていきます。

探求する上で参考になるアイデアに触れた生徒たち。より探求内容が充実しそうです!

パソコンを使って取材内容をまとめる!

取材チームは、早いところはすでにインタビュー原稿が完成!

取材相手の回答が話し言葉になっている?会話文として成り立っている?原稿の分量は?内容はちゃんと盛り込まれている?取材相手の立場になったとき、その内容で本当に納得するものになっている?

一つ一つ確認したら、今度はパソコンに原稿を打ち込んでいきます!ウェブメディアに投稿する準備!

探求チームは「問い」について調べる!

一方の探求チームは、ほかの生徒たちに回答をお願いしたアンケートの集計。質問に対する答えとして、ポジティブな意見、ネガティヴな意見をまとめ、分類作業。

「これどっちに分類するの?「集計って何していいかわからない?」

「このYesの回答数、計算あってる?」

「まだ回答が全部集まってないみたい。集めてきて!」

それぞれ集計作業に悪戦苦闘?しながらも、アンケート結果をまとめる作業を進めていました。

肝心なのは、集計作業ではなく、アンケートをとった結果、「何がわかったか」。アンケート結果から見えてくる「探求テーマ」に対する答えをチーム内で話し合います。

こちらはパソコンで調べ作業。
人間はどうして「食べる」の?という探求テーマのチームは、体を作る食べ物について、その栄養素と働きをネットで調べていました。

気になるのは、各班の進み具合です。

早い班は早いが、遅い班は遅い。模造紙に探求テーマについて書き込むところで終わっている班もあれば、すでにアンケート集計を終えて、「探求テーマ」に対する自分たちの「答え」を出そうとしている班もありました。

とはいえ、授業はあと2回。限られた時間の中で、インタビュー記事を完成、探求テーマをまとめ、
ウェブメディアにアップロードするところまで終えます。

いよいよ、ゴールが見えてきた感じ!
来週もお楽しみに!


テキスト:椎葉康祐

授業⑱自らの頭で考えて、まとめていく!

取材内容をインタビュー形式の記事に!

今回の授業では、取材チームは、取材した内容を「インタビュー形式」の記事になるようにまとめていきます。

取材した時の、生徒たちの質問と、ゲストの回答をそのまま記事にしても「会話形式」にならないので注意が必要なんですね。会話には「流れ」があるから。

例えば、助産師の羽鳥さんへの取材をまとめているチーム。

(生徒たちの質問)命はいつまで続くとおもいますか?→(羽鳥さんの回答)×××

とあって、いきなり、

(生徒たちの質問)収入っていくらですか?

と続いたら、読んでいる人は「ん?」となってしまうので、話題が変わるときは、実際のインタビューのときのように、「そうなんですね。…ところで話は変わりますが」とか、「つなぎ」の言葉が要ります。あと、なるべく自然な会話の流れになるように、実際に質問した順番と、記事に書く順番を変えるとか。

インタビュー原稿の完成度を高めるため、内容がもの足りないと思ったら、ほかの班で詳しくメモを取っていた人のノートを貸してもらってさらに内容を濃くしていきます。

取材チーム、「終わった」と思っても、ちょっと待って。出来上がって終わり!ではなく、時間いっぱい使って、良いものにするために頑張ります!

探求チームはアンケート内容を熟考

探求チームは、自分たちが考えた「問い」と、その「答え」の調べ方などを模造紙にまとめています。

「命ってなに?」というテーマについて、アンケート内容を考えている班もあります。

「問い」の答えを知るためにアンケートを取ることにした生徒たち。そのアンケート内容を見てアドバイスする磯木さん。

「『全部』っていう選択肢があったら、ひとつを選べない人はみんな『全部』を選んじゃうんじゃない?笑」

はたまた別の班には

「『選択肢』が少なくて選べない人がいるかもしれないから、誰でも必ずひとつは選べるようにしよう!」

などなど。

生徒たちは、磯木さんからアドバイスをもらって試行錯誤しながら、アンケート内容を考え直します。

生徒たちが自らの頭で考えて、「探求」している様子が間近で見られます。その中で、生徒たちが導き出した「答え」はどのようなものになっていくのか、非常に興味深い!

「房総すごい人図鑑」づくりは、終盤戦に差し掛かってきました!次回もお楽しみに!

テキスト:椎葉康祐

授業⑰ネットで調べたことは、答えになる?

前回のおさらい

取材チーム・探求チームに分かれて、取材チームはインタビュー記事を、探求チームは探求したい「問い」について、興味を持った理由、答えの予想、その問いを確かめる方法を考えていきました。

図鑑づくりも大詰めに差し掛かっています!

ネットで調べたことは、答えになる?

探求チームは、「問い」を確かめるための方法を、悩みながらも考えています。

「インターネットで調べる」

と、多くの生徒が書いています。

確かにそれが一番手っ取り早い方法。ネット世代ならではのアイデアです。

ただ、ネットで調べたことをそのまま問いの「答え」にしてしまってはいけません。なぜなら、それはあくまでも「ネット」の答えだから。問いの「答え」は、ネットで調べたことも参考にしながらも、「自分で」考えることが必要だからです。

講師の磯木さんは

「自分が調べたこと」と、「自分が考えたこと」を明確に区分することが大事です。

と生徒に伝えていきますが、生徒たちはなかなか苦戦している様子です。

取材したこと、探求したことを伝えたい相手は?

磯木さんはこう話します。

メディアの役割は「自分の知っている事を、知らない人に伝える事」。そのために取材チームは、「取材したことを知らない人に教えてあげること」と「自分の感じたことを伝えること」が大事。探究チームは「自分たち自身で調べた事」と「自分たち自身の考えた事」を伝えてください。

この中に、ネットで調べたことをそのまま書くということは含まれないのです。

生徒たちはこれまでの取材を通じて、地域おこしや、医療、食べ物、命、国など、たくさんのテーマについて学び、ゲストの思いを感じ取り、探求を通じて「考えること」を続けてきました。

この授業を通じて、自分が経験したこと、学んだことを、知らない人に伝える。これが、取材内容をまとめるチームの大切な役割です。

続いて探求チームは、探求したことをどんな人に伝えたいか、ターゲットを決めていきます。
ターゲットが違えば、「伝え方」が変わってくるからです。

小学生に伝えたいのなら、簡単に噛み砕く必要がありますし、大人に伝えたいのなら、大人の知らないことを伝える必要があります。

と磯木さん。

班内で「伝えたい相手」は統一します。メンバーみんなが同じ方向を向いて、探求していくことが大事です。

「店とは?」という問いを立てた班がありました。「誰に伝えたい?」と尋ねると、「これから店を始める大人!」と返ってきました。僕も飲食店をやるので、教えて欲しいな。

また別の班は「命に違いはあるの?」という問いを設定していました。この班は「同じ世代(中学生)に伝えたい」と意気込んでいました。この貴重な経験を、他の中学生にもどんどんシェアして欲しいです。

探求テーマを模造紙に下書き!


班に一枚ずつ、模造紙が配られます。探求テーマをこの模造紙にまとめていきます。いよいよまとめ作業も大詰めという感じ!

「タイトルの字体が「謎」っぽいクネクネがいいよねー」

と生徒。

中身より体裁にこだわる…。ちなみにこの模造紙、まだ下書きです。まあ、楽しそうでいいけど。


一方の取材チーム。質問とその答えを書き出し、順番を並び替え…その繰り返し。

「大変だけど楽しいです!」

楽しそうで何より。とにかく、「図鑑づくり」を楽しんでいる生徒たち。ちゃんとまとまるかどうか心配ではあるけど、楽しんでやれば何とかなる?!

来週も気合いを入れて、図鑑づくりに取り組みます!お楽しみに!

テキスト:椎葉康祐

授業⑯ひとりで考える。みんなで考える。

前回のおさらい

前回から生徒たちは「房総すごい人図鑑」の完成に向けてまとめ作業に入りました!班の中で「取材内容をまとめるチーム」と、「さらに探求するチーム」に分かれ、作業開始!

ところが「さらに探求するチーム」、同じ班なのに「探求テーマ」の認識がちょっとずつズレていたり、「何がわかれば探求テーマの答えが出そうか」のアイデアがなかなか出せなかったり、苦労している様子。

果たして、「房総すごい人図鑑」は無事完成するのか・・・?

探求チームに助け舟

「探求」、なかなか苦戦する生徒も多く、そこで考えるために頭を整理するための紙が配られました。

この用紙が与えられたことで、少しは考えやすくなったかもしれません。

「頭で考えるもの」と「体で感じるもの」

前回の授業で、「『命って何だろう?』というテーマの班内で、『命』って言う言葉そのものの起源で考えている人と、『命』自体のことを考えている人がいて、問いの解釈に「ズレ」があることががわかりました。

問いを考える、探求する上では、「認識の統一」が必要であることがわかりました。そこで、班の探求テーマを考える前に、「認識」についてのウォーミングアップ。

1. 頭で考えるもの
2. 体で感じるもの

「問題が簡単、難しい」というのは、1.頭で考えるもの。
「部屋が暑い、寒い」というのは2.体で感じるもの。

では、「面白い、嬉しい、悲しい」という感情は?

1.だと思う人(はーい)

2.だと思う人(はーい)

どっちにも手を挙げていない人もいます。

「どっちも!」

・・・つまり、1. と2. が混じるという考えもあるようです。

「じゃあ自分たちが探求しているテーマはどっちに分類されるかな?」

探求テーマが「頭で考えるもの」なのか、「体で感じるもの」なのか、あるいは「どっちも混じっているもの」なのか。その認識を統一できてるだけでも、班の中で探求テーマの認識統一ができそうです!

「問いを確かめる」問い?その問いを確かめる方法?

探求テーマを考える作業に戻ります。

生徒たちを見ていると、先ほど配られた用紙の、「問いを確かめるための問いは?」と「それを確かめるためになにをしたらいい?」の項目があまり埋まっていません。

埋まっていても、「なにをしたらいい?」の答えが「インターネットで調べる」が多数。

でもそれは、あくまでもインターネット上の答えであって、自分が考えた答えではありませんね。生徒自身で「答え」を出すために、安易に「ネットの答え」には頼らないでほしいところです。

一旦ひとりで一生懸命考えたあとは、考えて書いた内容が、別の班の人にちゃんと説明できるか、そしてちゃんと意味が伝わるのか試していきました。

一方で、「取材内容をまとめるチーム」はひたすらインタビュー内容をまとめています。机の上が付箋だらけになっていました。

「さらに探求するチーム」は、一人でまとめていたものを、班で共有します。

今後は、一人ではなく班でまとめていきます。考えるのも一人じゃないから心強い!?

「房総すごい人図鑑」、まとめ作業はまだまだ始まったばかり!
完成に向けてもうひと頑張り!次回の授業もお楽しみに!

テキスト:椎葉康祐

授業⑮まとめの作業がスタート!

前回のおさらい

前回は、いすみ市の地酒「木戸泉」でお酒づくりに励みながら、日本の「酒」「発酵」文化を広める活動をしているジャスティン・ポッツさんの取材でした。

ジャスティンさんは、日本の「酒」「発酵」に魅了されて、日本人以上に日本を楽しみ、日本のすばらしさをもっとたくさんの人たちに広めようと活動を続けています。
日本人が日本自体の魅力になかなか気付けていない中で、ジャスティンさんが語ってくれた日本の魅力は、日本人の心に響き、「気づき」を与えてくれました。

「日本には本当にいい文化があるのだから、もっと日本人はその文化をエンジョイしよう!」

ジャスティンさんからのメッセージを受け取った、これからの日本を担う生徒たち。ジャスティンさんの「想い」に触れ、日本のすばらしさを再認識する機会となったことでしょう!

今日から図鑑完成に向けてまとめの作業!

ひとまず、前回の授業で「房総すごい人」の取材を終えた生徒たち。これから図鑑の完成に向けて、まとめの作業に入っていきます!

まず、班内で「探求テーマ」を決め、決まったら、磯木さんに班で決めたテーマを共有します。

生徒:「イタリアンのシェフ(川上さん)が来た時、『【店】ってなんであるの?』という探求テーマが浮かびました!」

磯木さん:「そのテーマにした理由は?」

生徒:「【店】がたくさん存在する理由がわからないからです。あと、なんで「店」として固定した場所にあるのか、移動してもいいのでは?と思ったからです。」

磯木さん:「班のなかで、なぜそのテーマにしたのかを話し合って、理由をもっと明確にしてみて。」

磯木さんは、班の中でよく話し合い、探求テーマを吟味するように促していました。

また、このような班も。

「探求テーマは『食べるとは?』です!」「いや、『食べる幸せとは?』です!」

磯木さん:「班の中で『テーマの共有』はちゃんとできてる?」

班の中でも、テーマが1つにまとまっていなかったり、テーマの認識が少しずつずれていたり・・・
「個人の関心を、班で共有することが大事」ということを、磯木さんは生徒たちに確認を促していました。

何が分かれば答えが出る?

探求テーマが決まったら、班の中で役割分担を決めます。これからは、「取材内容をまとめるチーム」「さらに探求するチーム」に分かれて作業です。「さらに探求するチーム」は、まずは一人で作業を黙々と進めていきます。

「人」ってなんだろう?
答えは、「心」ではないか?
「人」って何なのか分かりたい!という「心」がなければ、「人」って何がわからない。
この問い、何が分かれば答えが出そう?
人について知ることにヒントがありそう?

「何が分かれば答えが出そうか」・・・これにつまずく生徒が多数。

一方の「取材内容をまとめるチーム」。ふせんに書いて貼る、書いて貼る・・・の繰り返し。今まで取材したメモを基に、まとめ作業を進めます。

同じ認識で「探求」していく

「さらに探求するチーム」の、これまでの作業進捗を確認します!

磯木さん:「できた人はー?」

生徒たち:「(はーい)(^O^)/」

磯木さん:「じゃあ発表できる人!」

生徒たち:「(しーん…)」

あまり自信がない様子・・・

生徒たち自身の口から進捗がうかがえないので、磯木さんからアドバイス。

「『命って何だろう?』というテーマの班がありました。同じ班のメンバーでも、『命』って言う言葉そのものの起源で考えている人と、『命』自体のことを考えている人がいます。最初に設定する問いの解釈に「ズレ」があると途中で進めなくなってしまうので、認識をしっかり統一してみてください!」

同じ認識で、「テーマ」の問い、答えを考えていく。班で同じ方向を向いて「探求」していくのが、今後のまとめ作業では大事になってきそうです。次回の授業も引き続きまとめの作業!がんばれ生徒たち!

テキスト:椎葉康祐

授業⑭酒蔵の蔵人にインタビュー!

今回のテーマは「お酒」「日本」「国」!


いよいよインタビューも今日で最終回。酒蔵の蔵人、ジャスティン・ポッツさんの取材をします!

ジャスティンさんは、アメリカのシアトル出身。日本でもあまり聞きなれない「利き酒師」という資格を持っていて、日本の伝統文化を学び、たくさんの方々に「日本の魅力」を伝えようと活動しています。
こういうの、日本人より外国の方々のほうが熱心な気がしますね。

さあ、ジャスティンさん登場!

「How are you?」

…いきなり英語で話しかけられて戸惑う生徒たち。

「はーいこんにちは」

日本語ペラペラでした笑。

ジャスティンさん、何か変わった服を着ています。「木戸泉」?

実はいすみ市では、「木戸泉酒造」という地酒メーカーがあり、ジャスティンさんは、その酒蔵で働きながらお酒造りを学んでいます。

また、発酵食を中心として、「食」に重きを置いた活動にも関わっています。ジャスティンさんの活動には、日本の「発酵文化」が深く関係しているようです。

今回の探求テーマは「国」。アメリカ人であるジャスティンさんが、国を越えて活動をしていることが、今回のテーマに関係しているのかもしれません。

生徒が用意してきた、

「言葉ってなんだろう?」
「国って何だろう?」
「なぜ国を越えて活動したいと思うのだろう?」

という質問の答えは、ジャスティンさんの「生き方」そのものにヒントが隠されているかもしれません。

なぜあなたは日本に!?


生徒たちの大多数が持っている疑問は、

「なんでジャスティンさんは日本にやってきたの?」
「なんでアメリカの人が日本の魅力を広めたいの?」

ということ。

日本に来た理由を聞いてみると、

「日本の大学しか留学先の選択肢が無かったから」

だとか。
もともと日本にどうしても行きたくて・・・では無く、たまたま日本に来たというジャスティンさん。
意外でした。でもこれは、何かの「ご縁」だったのでしょうか。

たまたま来た日本で「酒」にであい、それに魅了され、日本の素晴らしい「酒」をはじめとする伝統文化、発酵文化を広めたいと。

「じゃあなぜお酒を広めたいと思った?」

生徒が問いかけます。

ジャスティンさんは日本に来てから、日本の地方の農家さんとの出会いをたくさんしてきました。
そこで味わった、本当に「おいしい」料理。そして、「酒」。

東京にはこんなに美味しいものは無い、とジャスティンさんは日本の郷土料理と地酒を絶賛。
そして、ジャスティンさんが日本の地方で出会った「発酵食」。

味噌、醤油、納豆、麹、酒・・・発酵食を通じて、「体が元気になる」ことを体感しました。
これが、ジャスティンさんがお酒に、「発酵」に興味持ったきっかけだそう。

もっと「エンジョイ」しようよ!日本人

生徒:「日本を外国に広めたい理由はなんですか?」

ジャスティンさん:「こんなに日本には素敵なところがあるのに、日本人自身があまりエンジョイしていないように見えたから」

確かに納得。日本人、エンジョイしてる???
やはり、日本の「ストレス」社会を見て、外国の方々はそのように感じるのでしょうか。

日本の、特に地方には、宝のような自然や食がたくさんあります。しかし、地方にいるのはおじいちゃんおばあちゃんばかり。若い人は都会に出て行ってしまいます。

このままでは、地方のいいものを受け継ぐ者がいない…。地方の魅力を、大半の日本人が気づいていない。気づいていても、環境の変化への不安からなのか、収入への不安からなのか、都会の暮らしからなかなか抜け出せない。

「日本はいいものがたくさんあって楽しい!でも、日本人は全然楽しめていない!せっかくいいものがあるのにもったいない。みんなで楽しいものを共有しようよ!エンジョイしよう!」

ジャスティンさんの考えに、激しく同意した地域おこし協力隊の椎葉(レポート担当)です。

ジャスティンさんは自分の活動を通じて、日本人が日本の伝統的な酒や発酵食など、日本のいいものを楽しめる環境を作っていきたいそうです。

アメリカを離れて気づいた、アメリカの良さ

生徒:「なぜアメリカのことではなく、日本のことを広めたいのですか?」

ジャスティンさん:「そうですね、最近は少しずつ、日本の良さと同時にアメリカのことも広めたいと思うようになってきました」

離れて気づく、故郷の良さ。

ジャスティンさんの故郷、アメリカ東海岸の「シアトル」は、海や湖があって、街中から車でちょっと行けば大自然が広がっていて、美しいところなのだとか。

「故郷から離れ、故郷のことを俯瞰してみると、故郷の「魅力」に気づける」という意見は、ジャスティンさんだけではなく、第1回の取材ゲスト、奥村さんも言っていたことです。

東京に出てきて気づいた、地元宮崎の良さを感じている私、椎葉も同意見です。

今は「いすみ」の魅力がよくわからなくても、そのうち「良さ」に気づく時が来る。生徒たちにも伝わってくれるでしょうか。

「出会い」そして「今」が活動の原動力

生徒:「日本の良さを広める活動をして良かったことは?」

ジャスティンさん:「たくさんの『出会い』があったこと」

活動を通じて人と出会い、その人からの紹介また新しい人と出会い、またその人を通じて新たな人と出会う・・・その繰り返し。「出会い」が「出会い」をつなぎ、また新たな「出会い」に繋がっていったそうです。

そうして、「楽しいこと」「いいもの」は生まれていく、とジャスティンさんは言います。ジャスティンさんの「酒」「発酵」との出会いも、まさにそれ。「出会い」の大切さを知りました。

生徒:「いつまでこの仕事を続けますか?」

ジャスティンさん:「わからない。今を生きる。それだけですね。」

かっこいいですね。グッときます。時代はめまぐるしい変化の中にあるので、今ある仕事が近い将来なくなることも普通にあり得ます。一方で、時代の変化によって新たな仕事が生まれる可能性もあります。
やりがいのある仕事を求めて、「今」、この時を動き続ける。ジャスティンさんのマインドに心を動かされました。

ジャスティンさんは、日本の「酒」「発酵」に魅了されて、日本人以上に日本を楽しみ、日本のすばらしさをもっとたくさんの人たちに広めようと活動を続けています。

灯台下暗し、日本人が日本自体の魅力になかなか気付けていない中で、ジャスティンさんが今日語ってくれた日本の魅力は、日本人の心に響き、「気づき」を与えてくれました。

これからの日本を担う生徒たちが今日、ジャスティンさんの「想い」に触れる機会があって本当によかったと思います。

もっと日本人、「エンジョイ」していこう!

『房総すごい人図鑑』で取材するゲストは、ジャスティンさんが最後。次回からは取材内容をまとめる作業に入っていきます。

図鑑の完成に向けて、ますます拍車がかかります!次回もお楽しみに!

テキスト:椎葉康祐

授業⑬『国』って、なに?

前回のおさらい

前回は、助産院「ハッピーマンマ」の羽鳥さんを取材しました!

赤ちゃんとお母さんの「命」にかかわり、「命」をつなぐ仕事をされている羽鳥さんからの言葉一つ一つに重みがあって、「『命』とは何なのか。」ということを深く考える機会になりました。

「赤ちゃんとお母さんどちらかしか助けられないときにどちらを選ぶ?」という究極の質問にも、「みんなだったらどうする?」と、質問した生徒たちに問いかけながら、「どちらの命も救うのが助産師の使命」と言い切る羽鳥さんの仕事への情熱には、胸を打たれました。

「命」について、生徒たちも、ゲストの羽鳥さんも、中学校の先生たちも、我々メンバーも、みんなで向き合い、考えることができました。

次回のゲストは、アメリカからやってきた日本酒の蔵人


次回、5人目のゲストは、木戸泉酒造の蔵人で、(株)ポッツ家プロダクションズ代表取締役のジャスティン・ポッツさん。
いつものように問いを考えていきます。

ジャスティンさんは、日本の良さを広める活動をしています。

この事実について具体的な質問を考えて、10個にしぼります。
房総すごい人図鑑の授業がスタートした9月から何回も繰り返された、問いを考える作業に、馴れてきた様子の生徒たち。
 
とにかく沢山ふせんを書いている班
ふせんをきれいに貼る班
ふせんを貼った紙を見やすくまとめる班
リーダー的な子にゆだねる班
ひとつづつ読み上げて多数決をとる班

ふせんのまとめ方や選び方など班ごとに特徴が出てきました。

「なぜ蔵人になったのか? お酒造りに興味をもったのか?」といったような、外国の人が日本文化に興味をもつことへの疑問。
そして、移住者に対していつも出てくる「なぜ、いすみ市へ移住したのか?」を繰り返すことで地域に対して愛着や自信につながるといいな。

「国ってなんだろう」

ジャスティンさんへの問いを考えたあとは、探求テーマ「国ってなんだろう」について、3つのテーマで話し合います。

1)なぜ人は国をつくるのか?

生徒の意見

・力を持った人たちが自分のモノにしたかった。
・人が多いから管理しやすいサイズにした。

2)国境線や隣町との境はどうやってできた?

生徒の意見

・自然に分かれた。大陸移動で
・その土地にきた人が決めた(コロンブスとか)
・地図を作った人が決めた(伊能忠敬とか)
・しゃべる言葉で分かれた

3)国によって場所によって言葉が違うのはなぜ?

生徒の意見

・文化がちがうから
・先に住んでいた人のなごり、教え。

などなど

「国」について、答えのない問いを考えるのはむずかしそう。班での話し合いもいつもより盛り上がりに欠けていた印象です。


「国境や自治体の境って?」について考えるときに、講師の磯木さんが生徒たちに出したヒントとして社会の授業で習っている室町時代や南北朝にからめて話すと頭がクリアになる生徒がいた反面「ヤバい!歴史ぜんぜんわかんない~」と勉強と紐づいた途端にアレルギー反応が出てしまう生徒もいました。

さて、次回のインタビューはどのようになるでしょうか!?

テキスト:清水京子,椎葉康祐

授業⑫助産師さんにインタビュー!

今回のテーマは「命」

今日は、年末に準備を進めてきた取材の当日。ゲストは、助産院「ハッピーマンマ」の羽鳥さんです。

今回のテーマは「命」。

重たい内容だけれども、人間誰もが向き合う、大事なテーマ。「命」にかかわる探求テーマは、どれも深いものばかり。

「命」に違いはあるの?
「命」は何でできてるの?
「命」はいつまで受け継がれるの?

子供も大人も、みんなで考える「テーマ」です。羽鳥さんがどのような受け答えをするのかも気になります。

早速取材スタート!

羽鳥さんが拍手で迎えられました。
中学生のころは勉強が好き、知ることが好きだった羽鳥さん。

「みんな、勉強は好きじゃない?好きな人いるでしょ?」

・・・中にはうなずく生徒もいましたが、渋い顔をする生徒多数。ただ、今までの授業の取り組みを見ている限り、探求心旺盛で「知る」ことに貪欲で熱心な様子は見ているので、本当は勉強が好きなのでは?勉強は、国数英だけでないですからね。

助産師不足の「いすみ」で、助産師がいること

「羽鳥さんは何故いすみに?」

「田舎生活への憧れ」があった羽鳥さん。東京の病院で働いた経験を生かして、田舎で自分で助産院をするためにいすみにやってきました。

「産後のストレスで自殺した人はいますか?」

非常にストレートでなかなか聞きづらい質問をぶつける生徒達。その質問にも羽鳥さんは丁寧に答えます。

実際、お母さんの10人に1人は「産後うつ」になってしまうそう。

お母さんの表情が全くない、育児が辛い。でも、頼りにしたいお父さんが仕事でいない。赤ちゃんはずっと泣いている。そういったことでお母さんは精神的に追い込まれてしまい、お母さん自身を傷つけてしまったり、時には赤ちゃんに当たってしまったりするそうです。

羽鳥さんは、お母さんと赤ちゃんをサポートするために、「赤ちゃん訪問」といって、産後のお母さんのお宅を定期的に訪問して、メンタルのサポートを行っているとのこと。

羽鳥さんの心遣いが、お母さんと赤ちゃんの「心の支え」になっていることが伺えました。

お母さんと赤ちゃん、どちらの命を選ぶ?

生徒:「もし、お母さんと赤ちゃんの命のどちらかしか救えない時、どちらの命を救いますか?」

羽鳥さん:「究極の選択だね、みんなはどう思う???」

羽鳥さんは生徒達に質問を投げかけます。私だけではなく、みんなも考えてほしい、という「思い」が伝わってきました。

生徒達から、「選べない!どっちも救いたい!」という声が上がりました。

そう、医者の使命は、お母さんと赤ちゃん、どちらの命も救うこと。羽鳥さんはそのように答えました。羽鳥さんの、「助産師」としての「使命感」を強く感じます。

実際、お母さんと赤ちゃん、どちらも命の危険があったときに、1人では救うのが難しいので、「2人以上」で分娩介助することが絶対だそうです。

出産は常に「危険」と隣り合わせ。
「鼻からスイカが出てくる」と表現されるほど、お母さんは本当に大変な思いをして赤ちゃんを産みます。
出産には平均でも半日かかる、長丁場。だから、しっかりと呼吸すること、食事をとることが大事になってきます。

「お母さんをやさしくさすってあげてね」

お母さんの体をさすると、「愛情ホルモン」というものが出て、痛みが和らぐのだとか。

実際に、生徒たちが隣の人の背中をさすりあいました。なんだか安心して、心の緊張が和らいでいく感じ。「愛情ホルモン」を体感することができました。

赤ちゃんと一番最初に目が合うのが助産師

生徒:助産師の「やりがい」は?

羽鳥さん:「お母さんには申し訳ないけど、赤ちゃんと一番最初に目が合うことかな」

そう答える羽鳥さん。

赤ちゃんの体を取り上げ、一番最初に赤ちゃんと目が合うのは、助産師の「特権」。それを「ありがとう、幸せ」に思うと、落ち着いた表情で伝えます。

本当に「幸せ」なんだな、という感情が伝わってきます。

「お母さんや赤ちゃんの苦しい様子を見ると、自分も苦しくなる。逆に、お母さんや赤ちゃんが幸せだと、自分も幸せ。」

羽鳥さんと、お母さん、赤ちゃんの「気持ち」は一つ、というのが伝わってきます。

「助産師は定年が無いので、一生涯続けられる。」

80歳でも普通に現役で助産師さんがいるほど、生涯にわたって続けられる仕事というのも、助産師の魅力。
分娩介助以外にも、講演活動や、お母さん向けの出産教室など、いろいろな仕事のやり方があるとのこと。
羽鳥さんのような、いつも「赤ちゃんとお母さんの味方」になってくれる助産師さんが、一生涯助産師さんを続けられると聞いたら、赤ちゃんもお母さんも安心です。

羽鳥さんが考える、「命」の探求テーマ

生徒:「なぜ命にはモノを動かす力がある?」

羽鳥さん:「生きているから、心があるから、動くことができるんじゃない?」

生きているだけで、受け止めてくれる人はいる。赤ちゃんを抱っこするように。羽鳥さんの言葉に心を打たれました。その言葉で、励まされ、自身が持てた生徒も多いはずです。

生徒:「命はいつまで受け継がれる?」

羽鳥さん:「人類が存在するまで一生かな。」

命は、人類がある限り、受け継がれる。まさに、「命を受け継ぐ」ことを仕事にする助産師さんが言うからこそ、すごく心に響きます。

今回の取材は、単に「助産師」の仕事を理解することができただけではありません。

「『命』とは何なのか。」

生徒だけでなく、先生も、僕たちも、みんなで考えるテーマに向き合うことができました。

テキスト:椎葉康祐