授業㉑最終回は、ゲストも交えて発表会!

最後の授業。まず冒頭に個人で授業全体のまとめ

とうとう今日が最後の授業。
半年間かけて「取材」と「探求」を続けてきた生徒たち。「取材内容」をインタビュー記事にしてパソコンに打ち込み、「探求内容」を一枚の模造紙にまとめていきます。その「まとめ」作業も最終段階です。自分自身が、どう感じたか、どう考えたかを紙にまとめていきます。

感じたこと、考えたことは一人一人違うので、グループではなく「個人」でまとめに取り組みます。
自分が「取材」や「探求」を通じてわかったこと、わからなかったことを明らかにしていきます。

「店がなくなったらどうなる?」というテーマを探求した生徒のまとめでは、生徒全員にアンケートを取った結果、「店がなくなると困る、不安だ」という意見が7割、「店がなくても自分でなんとかする」という意見が3割だったとのことです。
「店」への依存度がこんなにも高いということが、「7割」という客観的データで示せたとともに、「店」があることのありがたみ、大切さを痛感したことは、探求を通じたこの生徒の「学び」になっています。

探求テーマをまとめた一枚の模造紙。時間と労力をかけて作り上げたこの模造紙に、一人一人の「想い」を書いていきます。

探求テーマを、取材したゲストの前で発表!

続いては探求テーマについて、全体の前で発表。それぞれの班が探求した内容をみんなに共有します。

そして、発表の時間にはなんと、取材をしたゲスト5人のうち、お2人が登場!
いすみライフスタイル研究所の奥村さんと、吉田外科内科医院の吉田さんです。

まず吉田さんも見守る中、医療の発展について探求したチームが発表します。


次の班がテーマにしたのは、「命はなんのためにあるの?」。

この探求テーマを確かめるために、
「人生とは?」
「亡くなったら魂はどうなるの?」
「心が無くなったら?」
という質問を考えてアンケートを取った結果、「命とは人生」ということがわかったのだとか。

探求を通じて、「生徒一人一人が異なる考えを持っている」という「気づき」があったことが、この班の「学び」となりました。

吉田さんは、「『医療』というテーマを経て、『命とは?』という根本的な問いへの発展させて探求したことに感動した」とおっしゃっていました。

生徒だけでなく、取材を受けたゲスト自身が「気づき」「学び」があるという、相互に「学び合う」時間。
それが、「房総すごい人図鑑」を作るこの授業の素晴らしいところだと、レポーターの私は感じています。

「街の良さ」について探求したこちらの班。自分たちで導き出したその答えは、「みんなが安心できるところ」。

意外と、みんな、いすみが便利だと感じていること。
みんな、いすみ市が好きだということ。

このテーマを探求してわかったことは、生徒たち自身の「いすみ」への愛情でした。
地元への愛情、それは生徒たち自身にとって「うれしい」発見であったと思われます。

いすみを愛し、いすみの活性化に取り組む奥村さんはこうコメントを残しました。

「時間に、気持ちに余裕がある人は、不便さは不便に思わない。」
「街づくりは、人づくり。」
「人が良ければ、街は良くなる。」

いすみを愛している生徒たちが中心になって、いすみの街づくりに取り組めば、いすみは「愛」に溢れた良い街となることでしょう。

探求するのは生徒だけではなく、「みんな」だということ

こちらは、「命に違いはあるのか」というテーマを探求したチーム。

アンケートを実施したり、「命」意味を辞書で調べたりして、たどり着いた答えは、
「命に大小は無い。命はみんな尊い。命に違いは無い。」ということでした。

ここで、「命」というテーマで、取材を受けた助産師の羽鳥さんから届いた、生徒たちへの手紙が読み上げられました。

「命って何?」という問いに戸惑ってしまった。」と、生徒たちからのストレートな質問に戸惑い、考えさせられたそうです。

「助産師にとって、命は守るべきもの。赤ちゃんを、お母さんを支える。命の鼓動が止まってしまえば、命は終わる。赤ちゃんの命の鼓動に耳を傾け、命をつなぐ。」

取材を受けて、助産師とは何なのか?助産師の使命とは?ということについて再認識したといいます。
「命」について探求するのは、きっと、生徒たちだけでなく、取材を受けたゲストであり、授業を支えた私たちサポーターであり、生徒たちと普段から接している岬中学校の先生たちであり、そして、今後ウェブメディア「房総すごい人図鑑」を観るたくさんの人たちです。

すべてのはじまりは、「問い」をつくることから

毎週2時間21回の「房総すごい人づくり」の授業で、地域NPO、医療関係者、料理人、助産師、海外出身の蔵人…様々な背景を持ち、仕事のジャンルも異なる方々への「取材」と、その方々に関連するテーマについての「探求」に取り組んだ生徒たち。

「命とは?」「国とは?」「店とは?」
生徒たちだけでなく、大人たちも頭を抱えるような「問い」の探求は、生徒たちと大人たちとが相互に学び合い、探求し合う機会となりました。

食べ物の問いについて調べていたら古代エジプトの歴史を勉強したこと。
命の大切さについての問いを探求していたら人体の仕組みなど生物学の勉強になったこと。
国についての問いを探求したら、日本や海外の文化に対する興味関心が湧いたこと。

国数英といった「教科」を学ぶこと=勉強と考えがちな私たちですが、世の中に溢れている「問い」の数々について自分の頭で考えること、これこそがきっと「勉強」なんですね。

一番最初の授業を振り返ってみると、授業冒頭に講師の磯木さんから提示されて取り組んだのは、冷蔵庫や信号、時計といった身の回りにある「モノ」はどうやって作られたかという「問い」を探求することでした。

それまで世の中に無かったものは、「問いの探求」を通じて作られていきました。

「食べ物を長持ちさせるには?」という問いからできた「冷蔵庫」、
「遠くま速く楽に行くには?」という問いからできた「車」、
「遠くの人と話すには?」という問いからできた「電話」…

「問い」から生まれた様々なものは、私たちを「幸せ」にし、世の中を「平和」にしてきました。

みんなが楽しく幸せに暮らす平和な世界。
その起点は、「問い」をつくること。

「房総すごい人図鑑」づくりに関わったみんながそのことに気づくことができました。そして、これから「房総すごい人図鑑」(このwebサイト)を見る人たちにもなにか感じてもらえたらうれしいです。

テキスト:椎葉康祐