プロジェクトの概要

概要

房総メディアエデュケーションプロジェクトは、千葉県房総地域の公立中学&高校でおこなう知的冒険授業のプロジェクトです。好奇心をそそる事柄や人に触れることで生徒が自在に学び、多様な思考、創造性、主体性を伸ばし、深めることが目的です。

2017年度より、総合学習の時間などを使ったアクティブラーニング式の特別授業のなかで、生徒一人ひとりを主人公にする、教育を核にした地方創生のための新しいカリキュラムとして有志数名で取り組んでいます。

2018年度はいすみ市ふるさと人財育成モデル事業を採択し、生徒のインタビューを中心に掲載した冊子も作成。岬ふれあい会館で行われた「いすみローカル起業フォーラム」では代表生徒による発表も2年続けて行ってきました。

ほか、いすみ市立岬中学校の隣の喫茶店の休業日を借りての中学生専用自習室、地域資源を活用した商品開発にも取り組んでいます。

千葉県教育委員会主催の、令和元年度『学びの「総合力・体験力」コンテスト』では、「房総すごい人図鑑」の授業が評価され、優秀賞を受賞しました。(※受賞は県内の中学校で2校のみ)

これからも地域に根差し、生徒の多様な価値観を育み、地域をより愉快で楽しい場所にしていくことを目指していきます。

視点を変える、問いをつくる

授業の中では、「問い」をつくり出す事に焦点を当てて進めています。
たとえば、世の中のすべてのものは問いから生まれています。

・布団は「快適に眠るには?」
・スマートフォンは「遠くの人といつでも話すには?
・車は「遠くまで楽に移動するには?」
・冷蔵庫は「食べ物を新鮮に長持ちさせるには?」

などなど。
だれかが良い問いをつくったからこそ、その答えとして、今では当たり前に身の回りにある、さまざまなものが生み出されました。

また、知っているつもりのモノやコトを題材にして、いろいろな角度で眺め、そこに新たな問いを見つけていきます。それは、知れば知るほどに「知らなかった」ということに気づいていくことです。

新しい知識ではなく、新しい視点を得ること。
視点が変わればこれまで使えなかった知識を使えるようになります。

また、「問い」づくりとは、落ち着いて、自分自身の思考に深く潜り込む行為でもあります。
知っていることを増やす(インプット)のではなく、知らないことに気づき、自分のなかからさらなる問いを作り出していく(アウトプット)することがおもしろい未来をつくる第一歩です。
(※ゲストを招いてインタビューは、あくまでもさまざまな視点から問いをつくる練習の一環です。講義のように一方的に大人から話を聞くのではなく、事前に相手のことを深く考え、自らの疑問と好奇心を明確にすることに重きを置いています。)

「問い」を生み出すことで、どんな人からでも、どんなことからでも自分で学べる人は、どこまででも自由自在に伸びていくことができます。

「問いを作る」ということは、正解の無い世界に踏み出すことでもあります。その世界はとても広大です。なにを言っても肯定される教室は、間違いを恐れる必要が無いため、とても賑やかです。

また、生徒は、他者を知り、自分を知り、地域課題を知ることで改めて自らの住む地域に出会い、考える力と実践する力を養っていきますが、彼らは受け取った言葉をそのまま血肉とするのではありません。

聞いた内容を理解しつつも、ある部分には疑問を感じ、ある部分には感動し、それまでは持ち得なかった自分だけの考えを育んでいきます。こうやって、頭が活性化していく楽しさを知ることは、すべての学びに対して好影響があるはずです。

「great」ではなく「unique」!

「すごい」は、一般的に「great(素晴らしい)」の意味で使われることが多いと思いますが、「房総すごい人図鑑」の「すごい」は、「great」よりも「unique(独自性がある)」や「strange(好奇心をそそる)」の意味を大切にしています。

これは、一般的によしとされるものを知識として知ることよりも、面白味のある人や独自性のある事例から、生徒がおのおの学び取ることに、学びの本質があると考えているからです。

人は「やれ」と言われるとやりたくなくなる生き物です。つまり、学びは人に強いられると、途端につまらないものになる。生徒の学びを前に進めるのは、生徒自身の「面白い!」や好奇心の感情によって自主性を伴う遊びになったときです。遊びで始めたゲームやスポーツでも、のめり込むほどに真剣な表情になっていくのと同じです。

世の中は「great」以上に、「unique」なヒト、コト、モノが溢れた方がもっとおもしろくなるはず。授業では、稀有で好奇心をそそる人や事柄と触れ、またそれらを題材にして生徒が自主自在に学び、自らのユニークな個性を深めていくことを目指します。

 
 
 

アイデアを生み出す発想のデザイン

「子どもは発想が柔軟」とよく言われますが、本当でしょうか。

もしも本当であれば、大企業が子どもを外部協力者に加えて、アイデア会議に出席させるはずですが、特別なイベント以外で、そうしたことをしている企業はほぼありません。

アイデアや発想を生み出すときに邪魔になるのは、知らず知らずのうちにとらわれてしまっている思い込みや固定概念です。「子どもは発想が柔軟」は大人の思い込みですし、多かれ少なかれ、子どももさまざまな思い込みにとらわれています。

では、本当の意味で柔軟な発想をし、アイデアを生み出すには?

授業では、さまざまなモノやコトを多角的に観察し、評価することを繰り返すことで柔軟な思考を身につけ、地域に関わるユニークなアイデアを生み出すことにチャレンジしています。

想像し、創造する

今、地方では、人口減少の解消のために「地域の情報発信が必要」と言われ、経済界では「新しい時代のビジネスモデルを生み出すクリエイティブな人材が必要」と言われ、教育の現場では「主体的対話的で深い学びが必要」と言われています。

どの問題も短期的な解決は難しいものばかりです。しかし、地域の仕事と教育とを融合させた循環モデルをつくることで、これらに対して包括的に取り組むことができるのではないかと、わたしたちは考えています。

日本も世界も新しい状況に移ろいつつあります。その中で人の心を打つのは、どこにでもある画一的なものでなく、個別文化を掘り下げたオリジナリティのあるものになってきています。都市でも地方でも、そこにしかない独自性をぴかぴかに磨き上げること。想像し、創造する力によって、ローカルはグローバルと繋がることができるはず。
 
視点次第で、地域は足元の宝物を見つけることができますし、そこに住む個人は誰かになることを目指すのでなく、自分であり続けることが出来れば、日常が愉快になる。それはとてもuniqueでstrangeだし、同時にgreatでもあります。

企画・運営

房総メディアエデュケーションプロジェクト

房総メディアエデュケーションプロジェクトは、学校の内外に多様なアクティブラーニングの機会をつくるプロジェクトです。

学びの楽しさを提案し、生徒の自ら考える力と日常に戻ったときの学びを最大化します。

「房総すごい人図鑑」は、房総メディアエデュケーションプロジェクトのメンバーが各学校の先生方とともに授業をおこない、生徒たちが地域の大人たちをインタビューして制作しています。

ビジョン

「人と地域がより豊かで、楽しく、創造的なものになること」。これが房総メディアエデュケーションプロジェクトのビジョンです。

子どもはみんな、無我夢中に走り回って遊びます。そうすることで元気な体が作られ、また、真剣に遊ぶことで自分が自由に行き来できる領域を広げていきます。それまで行ったことのない草むらの奥にワクワクして入っていくように、自分の領域を広げていく方法が‟領域そのものを「問う」”という行為です。つまり、「問う」ことは自由な遊びです。

「大人になると、いろいろ大変」「ずっと子どものままで遊んでいたい」。ぼくは子どもの頃、なんとなくそう考えていました。でも、自分が大人になってみると、大人は子ども以上に自由なんだ、ということを知りました。そのように思わせてくれたのは、日々ワクワクしながら生きている、まわりの大人たちの存在でした。

ぼくは、身近なことをおもしろがり、そこからさらにあらゆることをおもしろくしようとする人が増えたら、世の中はもっとおもしろく、楽しくなるだろうと思っています。

では、どうしたらそんな人になれるのでしょうか。それはきっと、ざまざまな人、モノ、コトに出会い、「問い」によってそのワクワクに触れること。また、そこからなにかに気づき、行動を始めること(領域を広げること)。

生徒の感性からも謙虚に学びながら、その最初の小さなきっかけを作っていくことに房総メディアエデュケーションプロジェクトは取り組んでいきます。子どもたちが大人になっても、自由な心を変わらず広げ続けられるように。

(文責 磯木淳寛)

メンバー紹介

磯木淳寛(いそきあつひろ)

企画運営/授業カリキュラム作成/授業実施/ゲストコーディネート/他

房総メディアエデュケーションプロジェクト発起人。企画・編集・執筆+αの仕事を地域と教育の分野で行う、一般社団法人picobirds代表。

oisixのライター/販売企画を経て独立。地域の編集と情報発信をテーマとした合宿型ワークショップ「LOCAL WRITE」を全国で開催。離島経済新聞社と日本財団の共催による海洋教育促進プロジェクト「うみやまかわ新聞」では、全国13地域のひとつとして、いすみ市太東小学校6年生の授業サポートとコーディネート(2015,2016年度)。2017年に房総メディアエデュケーションプロジェクト立ち上げ。ローカルの現場を多数取材してきた知見と活動経験を活かし、大学や企業での特別講師をはじめ、ボトムアップのまちづくりや企画構想、地域の教育についてファシリテーターや講演多数。執筆媒体は雑誌『ソトコト』ほか。著書『「小商い」で自由にくらす~房総いすみのDIYな働き方』(イカロス出版)はAmazon.jp「社会と文化」「経済学」の2部門で1位獲得。北海道函館市出身、いすみ市岬町在住。

「中学時代はサッカーと音楽(楽器演奏)の日々で、人生の楽しいピークのひとつでした。授業を通じて、生徒と楽しい地域や面白い世の中を作っていく仲間になっていきたいです」

清水京子(しみずきょうこ)

授業サポート/ロゴデザイン

イラストレーター×農業、たまにDTP。雑誌や書籍の挿絵やイラストマップ、イベントのチラシの制作など。いすみ市(旧夷隅町)出身、2014年にいすみ市にUターンし、在住。

「自分が子どものころは大人になることや仕事をすることはなかなかイメージできなかったので、このプロジェクトが生徒にとって、未来を作っていく力になるといいなと思っています」

田中藍子(たなかあいこ)

授業サポート

フリー英会話講師。サーフィンがきっかけでいすみ市に移住。酪農業や市内の地域活性化事業に携わる。合気道二段。趣味は料理。「ほらやっさカレー」の味部長。

「回を重ねるごと成長著しい中学生たちを驚きを持って見ております。中学生だけでなく、関わってくださった地域の大人たちのうれしそうな表情も印象的で、そうしたことも含めて、この授業がますます地域を活性化するプログラムになればいいなと感じています」

西田彩香(にしだあやか)

授業サポート/動画制作サポート/バックヤード

嗜好品メーカーで商品企画職、研究職を経験したのち、2016年末に退社。フリーランスのオンライン秘書、地域情報誌のライターなどを務める。2017年11月末まで当授業のサポートをしたのちオーストラリアに渡り、現在在住。オーストラリアに住みながら、当プロジェクトに関わっています。

「授業では、岬中の皆さんの自由な発想にすごく刺激をもらいました。よく知られた‟名前のある職業”以外にもたくさんの働き方があることを、私も中学生の時に知っていたらなぁとも感じました。この授業を通して感じた問い、講師や先生方、同級生たちの何気ない言葉が、皆さんの輝かしい人生のどこかで支えとなりますように」

高波佑樹(たかなみゆうき)

動画制作/撮影/授業サポート

福島県出身、国際武道大学生。現在在学中。勝浦市在住。2018年春より台湾のNational Taiwan Sports Universityに留学予定。

「風景写真をメインに日本・海外で写真を撮影してます。まだ勉強中ですが動画の撮影もしています。良かったら見てください」

椎葉康祐(しいばこうすけ)

ライティング(授業レポート)/撮影/授業サポート

旅する自然派料理人。日本貿易振興機構(ジェトロ)にてアフリカビジネス支援、特にアフリカ・ルワンダICTビジネス支援等を担当した後、2年で退職。2017年4月よりいすみ市・地域おこし協力隊。いすみ市やアフリカ・ルワンダ食材を用いた菓子・惣菜の開発、マーケットやオープンキッチン、シェアハウスでの食事提供、料理イベントを行う。千葉県いすみ市、宮崎県椎葉村、ルワンダの3拠点に農泊施設を開設し、農村体験プログラムを構築中。東京都生まれ、宮崎県日向市育ち。26歳。名字の起源は宮崎県椎葉村。

「房総すごい人図鑑で担当している授業レポートでは、授業を通じての中学生の成長の様子や、地域の仕事に取り組む方々へのインタビューの様子を見て、自分自身でも楽しみながら、中学生の生き生きとした姿を伝えていきます」

奥村雄司

奥村雄司(おくむらゆうじ)

見守り人

NPOいすみライフスタイル研究所副理事長、元 国吉中学校PTA会長、PTA顧問、学校評議員、元千葉県立大多喜高校野球部保護者会『大球会』会長、元いすみ市消防団第2分団分団長。2017年度、当授業のゲストのひとり。

丹田こみち(たんだこみち)

授業サポート

2016年よりいすみ市在住。現在、いすみ市地域おこし協力隊として活動中。

「私が学生の頃は‟考える技術”を学ぶことなんてなかったので、みんなが羨ましいです。問いを持つ事がみんなの中で日常になったらいいな」

SDGs 教育を通じて地域に還元

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに地球規模の課題を解決するべく、国連サミットで採択された世界共通の目標です。持続可能な世界の実現のための17の目標が示されています。

その目標の一つが「質の高い教育をみんなに」です。
房総メディアエデュケーションプロジェクトは、千葉県においてその積極的な役割を果たす主体となり、活動しています。同時に、教育を通じて地域に還元することで、住み続けられるまちづくりをおこない、SDGs達成に向けて取り組んでいきます。