プロジェクトの概要

概要

「自由の教室」および「房総すごい人図鑑」は、生徒の多様な視点と思考を育む知的冒険授業です。
好奇心をそそる事柄や人に触れることで生徒が自在に学び、創造性、主体性を伸ばし、深めることが目的です。

また、柔軟な思考を育んだ生徒のアイデアを形にすることで、地域をより愉快で楽しい場所にしていくことを目指しています。

当授業は2017年度にスタートし、公立中学高校で実施。これまでの実施校は、千葉県立大原高校、千葉県いすみ市立岬中学校、国吉中学校、睦沢町立睦沢中学校で、のべ生徒は500人以上(2021年3月現在)。2018、2019年度には千葉県いすみ市の事業に採択。

生徒のインタビューを中心に掲載した冊子も作成。年度末には代表生徒による市民への発表も続けて行っています。

千葉県教育委員会主催の、令和元年度『学びの「総合力・体験力」コンテスト』では優秀賞を受賞(※受賞は県内の中学校で2校のみ)。

ほか、いすみ市立岬中学校の隣の喫茶店の休業日を借りての中学生専用自習室、地域資源を活用した商品開発にも取り組み、売上はすべて授業の継続のために充てています。

自分の視点や思考を身につけると、自由になる

 

一番大切なことは、生徒一人ひとりの未来が明るくなることです。そのために必要なことは、生徒一人ひとりが人生の主人公として自由に生きるための力を身につけること。

そこで、当授業では総合的な力(非認知能力)として、①思考力②自己肯定感③好奇心・前向きな姿勢④発想力・企画力の4つを育むことにフォーカスして実施しています。

※実際に定量的にリサーチし、結果も出ています。

視点を変える、問いをつくる

授業の中では、「問い」をつくり出す事に焦点を当てて進めています。
たとえば、世の中のすべてのものは問いから生まれています。

・布団は「快適に眠るには?」
・スマートフォンは「遠くの人といつでも話すには?
・車は「遠くまで楽に移動するには?」
・冷蔵庫は「食べ物を新鮮に長持ちさせるには?」

などなど。
だれかが良い問いをつくったからこそ、その答えとして、今では当たり前に身の回りにある、さまざまなものが生み出されました。

また、知っているつもりのモノやコトを題材にして、いろいろな角度で眺め、そこに新たな問いを見つけていきます。それは、知れば知るほどに「知らなかった」ということに気づいていくことです。

新しい知識ではなく、新しい視点を得ること。
視点が変わればこれまで使えなかった知識を使えるようになります。

また、「問い」づくりとは、落ち着いて、自分自身の思考に深く潜り込む行為でもあります。
知っていることを増やす(インプット)のではなく、知らないことに気づき、自分のなかからさらなる問いを作り出していく(アウトプット)することがおもしろい未来をつくる第一歩です。
(※ゲストを招いてインタビューは、あくまでもさまざまな視点から問いをつくる練習の一環です。講義のように一方的に大人から話を聞くのではなく、事前に相手のことを深く考え、自らの疑問と好奇心を明確にすることに重きを置いています。)

「問い」を生み出すことで、どんな人からでも、どんなことからでも自分で学べる人は、どこまででも自由自在に伸びていくことができます。

「問いを作る」ということは、正解の無い世界に踏み出すことでもあります。その世界はとても広大です。なにを言っても肯定される教室は、間違いを恐れる必要が無いため、とても賑やかです。

また、生徒は、他者を知り、自分を知り、地域課題を知ることで改めて自らの住む地域に出会い、考える力と実践する力を養っていきますが、彼らは受け取った言葉をそのまま血肉とするのではありません。

聞いた内容を理解しつつも、ある部分には疑問を感じ、ある部分には感動し、それまでは持ち得なかった自分だけの考えを育んでいきます。こうやって、頭が活性化していく楽しさを知ることは、すべての学びに対して好影響があるはずです。

「great」ではなく「unique」!

「すごい」は、一般的に「great(素晴らしい)」の意味で使われることが多いと思いますが、「房総すごい人図鑑」の「すごい」は、「great」よりも「unique(独自性がある)」や「strange(好奇心をそそる)」の意味を大切にしています。

これは、一般的によしとされるものを知識として知ることよりも、面白味のある人や独自性のある事例から、生徒がおのおの学び取ることに、学びの本質があると考えているからです。

人は「やれ」と言われるとやりたくなくなる生き物です。つまり、学びは人に強いられると、途端につまらないものになる。生徒の学びを前に進めるのは、生徒自身の「面白い!」や好奇心の感情によって自主性を伴う遊びになったときです。遊びで始めたゲームやスポーツでも、のめり込むほどに真剣な表情になっていくのと同じです。

世の中は「great」以上に、「unique」なヒト、コト、モノが溢れた方がもっとおもしろくなるはず。授業では、稀有で好奇心をそそる人や事柄と触れ、またそれらを題材にして生徒が自主自在に学び、自らのユニークな個性を深めていくことを目指します。

 
 
 

アイデアを生み出す発想のデザイン

「子どもは発想が柔軟」とよく言われますが、本当でしょうか。

もしも本当であれば、大企業が子どもを外部協力者に加えて、アイデア会議に出席させるはずですが、特別なイベント以外で、そうしたことをしている企業はほぼありません。

アイデアや発想を生み出すときに邪魔になるのは、知らず知らずのうちにとらわれてしまっている思い込みや固定概念です。「子どもは発想が柔軟」は大人の思い込みですし、多かれ少なかれ、子どももさまざまな思い込みにとらわれています。

では、本当の意味で柔軟な発想をし、アイデアを生み出すには?

授業では、さまざまなモノやコトを多角的に観察し、評価することを繰り返すことで柔軟な思考を身につけ、地域に関わるユニークなアイデアを生み出すことにチャレンジしています。

当授業およびプロジェクトから生まれたあれこれ

■ショートショート作品「不思議な食べ物」の冊子(2021/3)
生徒101人のショートショート作品「不思議な食べ物」が、冊子になりました。一般の方は手に入りませんが、厳正に選考された優秀15作品は、こちらからご覧いただけます。
「不思議な食べ物」ショートショートコンテスト2021
https://www.jiyuaward.com/

■ブックステーション(2021/3~)
中学1年生が授業のなかで考えた、駅の待ち時間を楽しくする本棚。JR太東駅とJR長者町駅に2021/3/18(木)から設置中。
大切に読んでほしいという思いから、生徒自身の思い入れのある本を推薦文(ポップ)とともに新刊で置き、毎月2冊を入れ替え。また、読んだ人に感想やメッセージを入れてもらうためのボックスも、アイデアを出した生徒5人がのこぎりを使って木材を切って組み立て、ペンキも塗って制作した。

■東京赤坂「トランスレーションズ展」(2020/10 – 2021/6)
東京、赤坂の21_21 DESIGN SIGHTで現在行われている企画展「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」に、昨年までの授業「房総すごい人図鑑」が素材の一部として登場しています。展覧会ディレクターは、国籍を超えてさまざまな表現媒体に携わる情報学研究者のドミニク・チェン氏。
http://boso-sugoihito.net/archives/1371

■自宅で学べる中学生向けオンラインスクール(2020/6~)
「休校スクール」をきっかけに、子供をオンラインで学ばせたいという声を頂き、また、コロナの第2波第3波が来てもオンラインで学びの提供を続けられたらと思い、休校スクールをリニューアルした中学生向けオンラインスクールを始めることになりました。毎週日曜日の夕方5時から、少人数制で8名限定の気軽なスクール。
https://www.newtonsscope.com/

2020.6.16 【中学生向けオンラインスクール開始!】コロナに負けない

■休校スクール!(2020/4~5)
コロナ禍で学校が一斉休校。生徒の学びを止めず、自宅での保護者の負担も軽くするための、無料オンラインスクール(国数英)を休校開けまでの1カ月半実施。オンラインということもあり、神奈川県や新潟県からも生徒が参加。
http://boso-sugoihito.net/archives/1317

■冊子「房総すごい人図鑑」(2018年度/2019年度に制作)
生徒が取り組んだ特別授業「房総すごい人図鑑」の冊子が完成。地域で活動する方々へのインタビューや、授業レポート、生徒の座談会、先生たちへのインタビューなど。合計300部をいすみ市役所で配布。そのほか、ご寄付の返礼として送付しています。
http://boso-sugoihito.net/archives/952

■ほらやっさカレー(2019/8~)
千葉県いすみ市で毎年行われる大原はだか祭りをモチーフにして、プロジェクトで開発。「ほらやっさ」は神輿を担ぐ際のかけ声。地元商店の協力も得て、1年以上の試作を繰り返して完成した。顧客満足度は94%を超え、「房総すごいブランド」第1弾として2019年夏に販売開始。地域のお土産としても認知され、初年度に2500食を売り上げた。カレーの販売収益はすべて特別授業の運営に充てられている。
http://boso-sugoihito.net/archives/1009

■中学生専用自習室(2019/3~5)

いすみ市には「学生が気軽に勉強したり立ち寄れる場所がない…」とたまに耳にしていました。
…ならば!
ということで、毎週日曜日に岬中学校の隣の杢珈琲さんの定休日である日曜日に場所を借り、生徒に使ってもらえる自習室を始めました。
http://boso-sugoihito.net/archives/918

■いすみローカル起業フォーラムでの生徒の発表(2018/3,2019/3)
「いすみローカル起業フォーラム」において、昨年に引き続き「房総すごい人図鑑」の授業を飛び出して、岬中学一年生の代表生徒3名がまちを楽しくする企画アイデアの発表を30分間おこないました。
http://boso-sugoihito.net/archives/942

■大人向けの模擬授業イベント(2018/12)
「房総すごい人図鑑」「自由の教室」ってどんな授業?と聞かれることも多く、大人向けに模擬授業イベントを行いました。東京都や群馬県や鹿児島県などからも参加者が訪れ、大変盛況でした。

ビジョン「想像し、創造する」

「人と地域がより豊かで、楽しく、創造的なものになること」。これが房総メディアエデュケーションプロジェクトのビジョンです。

子どもはみんな、無我夢中に走り回って遊びます。そうすることで元気な体が作られ、また、真剣に遊ぶことで自分が自由に行き来できる領域を広げていきます。それまで行ったことのない草むらの奥にワクワクして入っていくように、自分の領域を広げていく方法が‟領域そのものを「問う」”という行為です。つまり、「問う」ことは自由な遊びです。

「大人になると、いろいろ大変」「ずっと子どものままで遊んでいたい」。ぼくは子どもの頃、なんとなくそう考えていました。でも、自分が大人になってみると、大人は子ども以上に自由なんだ、ということを知りました。そのように思わせてくれたのは、日々ワクワクしながら生きている、まわりの大人たちの存在でした。

ぼくは、身近なことをおもしろがり、そこからさらにあらゆることをおもしろくしようとする人が増えたら、世の中はもっとおもしろく、楽しくなるだろうと思っています。

では、どうしたらそんな人になれるのでしょうか。それはきっと、ざまざまな人、モノ、コトに出会い、「問い」によってそのワクワクに触れること。また、そこからなにかに気づき、行動を始めること(領域を広げること)。

日本も世界も新しい状況に移ろいつつあります。その中で人の心を打つのは、どこにでもある画一的なものでなく、個別文化を掘り下げたオリジナリティのあるもの。都市でも地方でも、そこにしかない独自性をぴかぴかに磨き上げること。想像し、創造する力によって、ローカルはグローバルと繋がることができるはずです。視点次第で、地域は足元の宝物を見つけることができますし、そこに住む個人は誰かになることを目指すのでなく、自分であり続けることが出来れば、日常が愉快になる。それはとてもuniqueでstrangeだし、同時にgreatでもあります。

生徒の感性からも謙虚に学びながら、その最初の小さなきっかけを作っていくことに房総メディアエデュケーションプロジェクトは取り組んでいきます。子どもたちが大人になっても、自由な心を変わらず広げ続けられるように。

企画・運営

房総メディアエデュケーションプロジェクト

房総メディアエデュケーションプロジェクトは、学校の内外に多様なアクティブラーニングの機会をつくるプロジェクトです。

学びの楽しさを提案し、生徒の自ら考える力と日常に戻ったときの学びを最大化します。

「房総すごい人図鑑」「自由の教室」は、房総メディアエデュケーションプロジェクトのメンバーが各学校の先生方とともに授業をおこなっています。

SDGs 教育を通じて地域に還元

SDGs(持続可能な開発目標)とは、2030年までに地球規模の課題を解決するべく、国連サミットで採択された世界共通の目標です。持続可能な世界の実現のための17の目標が示されています。

その目標の一つが「質の高い教育をみんなに」です。
房総メディアエデュケーションプロジェクトは、千葉県においてその積極的な役割を果たす主体となり、活動しています。同時に、教育を通じて地域に還元することで、住み続けられるまちづくりをおこない、SDGs達成に向けて取り組んでいきます。