お客様の素敵な思い出をつくりたい~季楽 ~KIRA~太陽と星が輝く宿 菅井直美さん

菅井直美さん

プロフィール

東京都生まれ、千葉県いすみ市岬町在住。22歳の時にモデル事務所をつくり、5年間で社員14人、所属タレント、モデルが700人の事務所になる。その後、27歳で会社を売り、格闘技のK-1に就職。K-1の広報・選手のマネジメントを12年間担当。再び芸能事務所を経営した後に、2017年4月、ずっと夢だったゲストハウス経営のためにいすみ市に移住を決意。いすみ市は高校時代にサーフィンをした思い出のまち。

【季楽 ~KIRA~太陽と星が輝く宿】

2018年7月にオープン。アジアンリゾート風の、5室のみのゲストハウス。およそ300坪の敷地には宿泊施設や開放的な広い中庭、露天風呂、ダイニング、室内プール、バーベキューガーデンなど。アジアンリゾートをイメージして家具は全てバリ島から輸入。

<インタビュー>

いすみで、夢を実現

―芸能事務所を一回やってK-1で働いたあと、なぜまた芸能事務所を経営しようと思ったんですか?

芸能事務所を一回目にやった後、K-1という格闘技の選手のマネジメントをして、その後再び、モデル事務所、芸能プロダクションの仕事をしていました。仕事を変えたように見えるけど、どれも内容は似ているんです。選手やタレントさんをテレビに出すという点では、同じような流れなんですね。

―いすみ市での思い出はありますか?

いすみ市は海も山もあって、東京からの距離も近く、私は日本一いい場所じゃないかと思うくらい素晴らしいと思います。人も優しくごはんも美味しくて、本当に楽しい思い出ばっかりです。

―いすみ市は元々どこで知ったんですか?

高校生の時です。かれこれ30年前なんですけどサーフィンをするために、よく通っていたのでこの辺は知っていました。

―いすみ市に住んで最初の頃、港の朝市ではどのようなものを出していましたか?

宿をオープンする前の一年半はずっとリフォームをしていたので、その期間に港の朝市でミーゴレンというバリ島の焼きそばを販売していました。私の主人がバリ島に6年住んでいたときに、ミーゴレンとナシゴレンという焼きそばとチャーハンのお店を現地で経営していたので、その経験を活かしました。

―いすみ市のどんなところを気に入っていますか?

いすみ市は本当に人も優しく、先程言ったように海と山と、東京からの距離も近くて食事も、食材も美味しいものがたくさんあるので気に入っています。

―地元の人たちとどのような話をしましたか?

まず近所の方とは、(Sちゃんもうちの裏に住んでるんですけど)よく一緒にバーベキューしたり、食事したりとか。役所の人は市長や副市長含めて宿をオープンするまでに本当に力になっていただいて、いろんなお話をさせていただきました。

―なんで宿に『季楽』という名前をつけたんですか?

『季楽』という字は季節の季に楽しいと書きます。季節ごとに楽しめるということで、春はタケノコ採りができたり、夏は海、秋には味覚狩りがあって、冬にも冬の楽しみを。ということで、一年中楽しめるようにこの名前をつけました。

―これから、どんな宿にしたいですか?

皆さんもどこかに旅行したことがあると思うんですが、旅行は1年間で1番楽しみになるような時間だと思います。宿としては、お客様に楽しかったと思ってもらえるように、お客様がどういう目的で来たかとか、ニーズを事前にお聞きしながら、楽しい思い出を作ってもらえるような宿にしようと、今もずっと心がけて経営しています。

―ゲストハウスを営業するために、いすみ市に移住を決意したのはなぜですか?

いすみ市にした理由は、海と山があって、東京からの距離も1時間ということもあって決めました。あと実は、物件は一軒しか見てないんです。たまたまその一件を見て一目惚れしてすぐに決めたので。ただ、もともとここにしたいなという場所がいすみ市でした。

―なんでリゾート風にしようと思ったんですか?

私はすごく旅行が大好きで、若い時から海外や国内をしょっちゅう旅行していました。その中でもリゾート地、特にバリ島が大好きです。もう何十回も行ってるんですけど日本にもあったらいいなと思って、海が近くにあるいすみでリゾート風に作りました。

―なんで部屋が5室しかないんですか?

元々あった物件が5部屋ある建物だったので、それらを活かしています。あと経営しているのが私と主人の2人なので、あまりたくさんお部屋があるとできないことも色々あり、自分たちのできる範囲で5部屋にしました。

―一年でどれくらいの人が訪れますか?

季節によりますが、集計したところ年間で昨年は1500人ほどご宿泊されています。

―どの季節に1番多く、人が来るんですか?

8月が1年間で1番来ます。やはり海水浴場が近いということもあって、8月にいらっしゃるお客様はほぼ海水浴で来ますね。

―どんなお客様が来ますか?

1番多いのは家族連れです。うちは5ベッドルームなんですけど、貸切で貸していることがほとんどで、そうすると10人〜15人、20人くらいのお客様が泊まられます。赤ちゃん連れの三世代の家族とか、会社の研修旅行とか、お友達同士、ママ友同士とかそういった方々に団体で泊まっていただくことが1番多いです。

―「宿を良くしていきたい」というのを具体的に教えてください。

もちろんお客様へのサービスもですが、施設の方も良くしていきたいですね。例えばうちは露天風呂と室内プールがあるんですが、室内プールは冬の間、殺風景だったのでオーストラリアから画家さんを呼んでウォールアートを描いていただきました。
あと、露天風呂も24時間暖かくなるように循環システムを入れたりとか。設備もバージョンアップして、お客様が本当に楽しかったなと思ってもらえるように設備投資をしています。

―仕事をしていて楽しいと思う時はいつですか?

笑い声が庭から聞こえたり、笑顔で"すごく楽しかった"、"食事が美味しかった"とか、帰られるときにも"本当にありがとうございました。楽しい思い出ができました。"と言って頂いたときに、この仕事をやって素敵な思い出を作ることができてよかったなと思います。

―仕事をしていて困ることはなんですか?

ほとんどは良いお客様なんですが、たまにハメを外してしまう方がいらっしゃいます。昨年は二階を水浸しにしてしまったお客様がいらっしゃいました。その時、床と天井の張り替えをするために、数日間宿を休館しなくてはいけなくなりました。
そういったお客様がいると次に予約していたお客様が泊まれなくなってしまいます。汚くなった絨毯等を早急に買い換えて、その日のうちに対応することもあります。

―なぜゲストハウスをやるのが夢だったんですか?

私は若い時から旅行が大好きで、そのたびに素敵な宿やいろんな人との出会い、いい思い出がたくさんできました。旅行好きな自分が体験したり、経験したことを今度は与える立場として、いつか宿をやりたいなとずっと思っていました。なかなか実現できなかったんですが、3年半前にたまたまタイミングがあって、いすみでやることができたという状況です。

―ゲストハウス以外にやりたいことはありますか?

まだスタートして3年目ですが、これからはゲストハウスと、実はもう一軒広げてやりたいなという夢があります。

―300坪って広いんですか?

広いかと言ったら、結構みなさんのお家でも広い方はたくさんいらっしゃいますよね。農業地域だともっともっと広いと思いますので。この辺だと普通くらいかなと思います。

―ゲストハウスとホテルの違いはなんですか?

うちは旅館業の許可を取っているんですが、どういう風に呼ぶかはそれぞれで特に違いは具体的にわからないですね。うちは貸し別荘みたいに一軒丸ごと貸すことが多いので、ホテルとはちょっと違うかなと思います。ホテルの場合、お部屋に泊まっていろんなお客様と会うと思いますが、一棟貸切だと他のお客様がいらっしゃらないので仲間同士で楽しむというスタイルですね。

―なぜ宿をアジアンリゾート風にしたんですか?

私はバリ島が大好きなので、家具も全部現地から輸入しました。建物に入った瞬間はバリのような雰囲気です。バリに行かなくても、うちにきたらアジアンリゾートのような特別な時間を過ごせるようにアジアンリゾート風にしました。

―季楽を建てるお金はどうやって集めたのですか?

若い時から会社をやっていたので、普通のサラリーマンよりもたぶん貯金はありました。私はブランド物にも興味がなかったので夢に向かって貯金をし、それでお家を買ったんですね。あと、いすみ市から助成金というものもあって、新しくここでビジネスをすることを申請して、リフォーム代金も補助していただきました。

―なんでK-1のマネジメントをしようと思ったんですか?

これはたまたまのタイミングですね。私がモデル事務所で女の子のマネジメントをしていた時、会社的には上手くやっていました。ただ、女の子のマネジメントって結構大変です。いろいろ苦労もあって悩んでいた時に、K-1をやっている社長さんと知り合うことがありました。そのとき、「よかったらうちで広報を募集しているからやってみないか?」、と誘ってもらったのがきっかけではじめました。

―ゲストハウスに泊まられたお客様の中で1番印象的だったお客様はいらっしゃいますか?

昨年の台風の前日に中国から来たお客様がうちの庭でガーデン結婚式をしたんです。しかもサプライズプロポーズで。女の子はウエディングドレスを着て、お友達同士がフラワーシャワーをしてすごく素敵で感動的なウエディングでした。ただ翌日の夜、いきなり台風15号が直撃してしまい、停電になり、車も通れなくなり、飛行機も飛ばなくて。翌々朝帰る予定だったお客様は帰れなくなってしまったんですね。

さらに、お客様は日本語が喋れなかったので翻訳ソフトを使っていたんですが、wifiも止まり、翻訳ソフトも使えなくなり、お客様と喋れなくなってしまったんですよ。お客様が何を言いたいか私もわからなくて、彼が頑張って話した一言が「オナカスイタ」でした。それでお客様と一緒にコンビニに行ったことが一番印象に残っています。

―芸能人のマネジメントする上で1番心がけていたことや、大変だったことを教えてください。

マネジメントする上で1番大変だったことは、K-1選手はスポーツ選手なので体を張って色々と挑戦していただけるんですけど、モデルさんとなると色々方向性も違うんです。そのタレントさんにあったお仕事をいろいろ相談しながら方向性を決めていきます。本人がやりたいこととテレビ局がやってほしいことがどうしても違う場合、その食い違いをうまくまとめることが難しかったです。

―芸能人のマネジメントなどが、今の仕事に役に立ってると感じることはありますか?

全く違うお仕事ですが、役に立っていることと言えば人を喜ばせたいという気持ちは同じだということですね。タレントさんにもテレビに出て輝いて欲しい、という気持ちで一生懸命やってきました。今はお客様にどうやったら1番楽しんでもらえるか、人に喜んでもらいたい、その人に輝いてもらいたい、というように自分がやるべきことをやることは同じかなと思っています。

―ゲストハウスの1日のタイムスケジュールとかを教えてください。

まず、朝ごはんを注文されるお客様が多くいらっしゃるので、お客様の時間に合わせて朝飯の準備をして提供させていただきます。だいたい5時半頃に起きて準備し、お客様のお食事は8時とかですね。その後チェックアウトがありまして、お客様が記念写真を撮ったりしてお見送りをします。それが大体10時すぎくらい。そのあとは、次のお客様のためのお部屋のお掃除をお掃除スタッフと一緒に行います。そのあとは、次に来るお客様のお食事の仕入れのために市場に行ったり、野菜や魚を買いに取引先に行ったりします。
15時にチェックインがあるのでお客様をお迎えします。その間に次のお客様や次の次のお客様とのやりとりの電話を受けたりメールでやりとりしています。今度新しいお客様がいらっしゃったらお迎えして。大体バーベキューされる方が多いのでその準備をしたりとか、夜にバーベキューをお客様に提供して、終わった後10時に庭の片付けをして、全部を片付けたあと次の朝ご飯の準備でまた朝早く起きるという、そういったルーティンで動いています。
この仕事は皆様がお休みのときに忙しいです。皆さんが遊んでる時、週末や年末年始、ゴールデンウィーク、夏休みのお盆期間とかに仕事をしているんですね。閑散期と言って、今の時期の平日に私達はお休みをとれることがあるので、そういった時期に旅行に行ったりしています。

―22歳で芸能事務所を作ったんですよね。すごく若いなと思うんですけど。どういうきっかけで最初芸能事務所を作ろうと思ったのかと、22歳は若いので、どういう流れがあったのか教えてください。

高校を卒業した18歳のときに、芸能関係のお仕事に進みたいと思ってイベントコンパニオンやモデルとかのお仕事をしていました。私は背が低いしそんなに可愛いわけではなかったのですが、行動力があったことが起業に繋がりました。モデルのお仕事をいただいた時に、「もっと可愛い子がいないかな?」と言われると、「あっ、私10人集められる」、みたいな感じで。それをやっていくうちにだんだん忙しくなって、周りの人に「会社やればいいんじゃない?」と言われるようになりました。そうして22歳で背中を押されるように会社を作ったんです。
若かったので始めた頃は無理かもしれない、失敗したらどうしようという気持ちもあったんですが、チャレンジあるのみと思ってその時は始めました。

―仕事をしていて辛かったことはありますか?

お客様が来ることはすごく楽しみで、時間的なこととか体力的なことは辛いとは全然思わないんですけど、先程言ったように、汚してしまったことを言わないで逃げちゃったりとか、そう言った揉め事に関してはやっぱりちょっと辛いなという気持ちはあります。

―僕は卓球が得意なんですが、ゲストハウスに卓球台はありますか?

ごめんIくん、申し訳ないです。うちには卓球台は置いてないんです。

―いすみ市で宿をやるにあたって、不安だったことはなんですか?

まず知り合いが1人もいない場所への移住だったので、東京から引っ越して家も仕事も全てリセットした状態に不安はありました。ですが、役所の人や近所の人とか、皆さん本当に暖かく仲良くしてくれて今は全く不安がないですね。

―K-1って膝を使うのはありですか?

K-1はキックボクシングなので膝蹴りはありますね。あとハイキックやローキックとかあります。

―今までやってきたことで後悔ってありますか?

今までいろんな仕事をしてきた中で失敗はすごくたくさんあるんです。嫌だったこととか辛かったこともあります。でも、実はそれが全て糧になって、それらがあったからこそ今に繋がっているので後悔は一つもないです。

―一泊の値段はいくらですか?

宿が一泊いくらかということですね。人数と時期によって値段が全然違うんですけど、2名一室で平日の場合、スタンダードだとお一人様7,500円で泊まれます。

(インタビュー:2019年度いすみ市立岬中学校1年生)

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房総メディアエデュケーションプロジェクトは、中学高校で、「問い」を起点に多様な視点を育む知的冒険授業をおこなうプロジェクトです。
2017年度より、生徒一人ひとりを主人公にする、教育を核にした地方創生のための新しいカリキュラムとして有志数名で取り組んでいます。
元々すべて自己資金で始めた活動ですが、地域にお金を回す事で当活動を継続できたらと思い、地域の方々にご協力頂き、「返礼品つき寄付金支援サイト」をつくりました。返礼品はすべて房総のとっておきの品ばかりです。どうぞご支援ご協力頂ければ幸いです。
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