授業⑪『命』って、なに?

<前回のおさらい>

前回は、イタリア料理店「trattorìa GIFT」のシェフ、川上さんを取材しました。

川上さんに仕事のやりがいを質問して、川上さんの「おいしい」料理作りに情熱を注いでいる点を明らかにしたり、今まで培ってきた「質問づくり」のスキルを最大限に生かし、内容を深掘りする「質問重ね」を通じて、川上さんの「食」へのこだわりや、お店に対する思いの部分を引き出していました。

また、授業の回を増すごとに、生徒たちの質問がうまくなっていることも発見できました。

特に探求テーマに関する質問では、ゲスト自身ががハッとさせられるような、答えづらい質問や、気づきのある質問が出てくることも。

しっかり取材の準備をすることで、取材内容が濃くなっているからこそ、探求テーマもより深く、考えさせられるものになっているのではないでしょうか。
とにかく、取材中は生徒たちも、ゲスト自身も、楽しく充実した時間を過ごせています。

生徒たちには、普段の授業や日常生活でも、物事に対する入念な準備が、その物事を充実させるという「気づき」を、この取材への取り組みの中で感じていってほしいと願うところです。

次回のゲストは、助産師の羽鳥さん!

さて、次回の取材に向けての準備に取り掛かります。

ゲストとして発表されたのは、助産院「ハッピーマンマ」の羽鳥恵美さん。


羽鳥さんは、いすみ地域には数少ない助産師さんで、出張専門で母乳育児相談を行っている助産師です。お母さんや赤ちゃんに寄り添い、「命」をはぐくむサポートをしています。

さっそく、助産師という仕事や羽鳥さんについて、疑問に思ったことを書き出していきます。

「自然分娩?マタニティー?帝王切開?」

助産師にまつわるわからない用語が多々あるようで、付箋に書き出していました。

そして、定番の「収入いくら?」。
毎回ゲストに聞くと、比較できるのでいいかもしれません。

命ってなんだろう?

赤ちゃんやお母さんの「命」を扱う、助産師の仕事。続いては、それに関連して、「命」に係わる探求テーマについて考えていきます。

「生きものと、そうでないものの違いってなに?」

という問いが講師の磯木さんから提示されると、

「息している、脳みそがある、感情がある=生きもの」

と班の中での話し合いのなかで考える生徒がいました。
すると同じ班の生徒が、

「じゃあ花は?脳みそとか感情ないけど、生きものじゃない?」

と反論。

「生きもの」と「そうでないもの」の線引きをどこでするのか。なかなか難しいです。

別の生徒は

「生きものは『死ぬ』けど、そうでないものは『壊れる』」

と発言。

・・・そうでないもの=「機械」と捉えての発言でしょうか。そういう考え方もあるのか・・・中学生の「観点」には、大人をハッとさせるものがあります。

動物と植物の命の違い

続いて磯木さんから提示された問いは、「動物と植物の命の違いとは?」でした。

班で話し合う生徒から聞こえてきた意見はこちら。

「植物は光合成する、でも動物は自分でエネルギーをつくれない」
「植物は動かない」
「植物は葉緑体がある」
「植物は再生する」

ん?でも動物も太陽を浴びてビタミンD生成するし、食虫植物のように動く植物もいるし、肝臓は再生するから動物も再生する・・・「葉緑体」は確かに植物細胞だけにあって動物細胞にはない(中学生、よく知っているな・・・)から、動物と植物の命の違いなのかもしれません。

地球以外にも命はある?


続いて生徒に投げかけられたのは、「地球以外にも命はある?」という問い。

すると生徒からはこんな発言も。

「宇宙飛行士は宇宙にいるから、地球以外にも命はある」

・・・なるほど!そういう考えがあったか!と思わず納得してしまいました。

「テレビで宇宙人が写っている映像を観たことがある」

・・・だから宇宙人がいると。つまり、地球以外にも命があるという考え。
そうかもしれない、でも「ウソ」の映像の可能性は?信じるか信じないかはあなた次第、という感じですね。
謎が深まるテーマに、議論が過熱していました。

今度は、生徒自身で「命」に係わる探求テーマを考えます。

「命の形はハート?」

心臓はハートの形で表されることが多いから、確かに疑問に思うかもしれません。

「あの世って?この世って?」
「死ぬって?」

死んだらどうなるのだろう・・・この世に生きている人間は、「生きている」上では体験し得ない「死後の世界=あの世」。確かに気になります。

「あの世」は「想像」でしかないので、人によって考え方が違うのも、探求テーマとしては面白いです。


「命って平等?命の平等はだれが決めている?」

人間は殺してはいけない、というのは法律があるけれど、「肉」として食べるために、鶏や豚や牛は殺される。でも、鶏や豚や牛にも「命」はある。

これは、「人間の命」は尊いけれど、「鶏豚牛の命」は尊くないってこと?これって命の「平等」と言えるのか?そしてその「平等」「平等でない」は誰が決めている?

これは、中学生だけでなく、大人もみんな考えるべきテーマである気がします。

取材班と探求班を決めるプレゼン

今までは、取材班と探求班は「じゃんけん」で決めていましたが、今回は違います!
「立候補した班の質問を聞いて、おもしろい班に投票する」というやり方。

そうすれば、「じゃんけん」みたいに「運だめし」ではなく、本当に取材班に、探求班になりたい!と思っている班が選ばれやすい方法と言えます。

立候補した班が考えた、羽鳥さんへの質問は例えば、

「ドラマを観て「これは現実と違うなー」と思ったことは?」

テレビドラマではよく、出産のシーンが取り上げられることがあります。実際に出産に立ち会っている助産師さんは、テレビドラマのシーンを見てどう思っているのか。気になるところです。

「生まれた時のことを覚えている?どうして覚えていられる?」

自分がお母さんのおなかの中にいた時のことや、生まれた瞬間を覚えている人がたまにいるそうです(僕は知らなかった)。でも大半の人が覚えていないはず。その違いとはいったい何なのか、気になるところです。

「母と子の命がどちらかしか助からない時、どちらを選ぶのか?」

これは究極の選択。実際選べと言われても選べないこの選択、助産師さんはどのような選択を下すのか、気になります。

上の質問を考えた班は、多くの生徒から共感を得て、晴れて取材班と探求班に選ばれました。


このように、班で考えた質問を他の班に共有できて、質問を吟味できて、ゲストにぜひとも質問したい内容が選ばれる決め方のほうが、いい質問が埋没することがなく、やる気のある班がちゃんと選出されていいですね!

羽鳥さんへの取材本番が今から待ち遠しいです!
次回もお楽しみに!

テキスト:椎葉康祐