好きを仕事にする「やってみる精神」~有限会社 髙橋自動車工業 店長 髙橋知宏さん

髙橋知宏さん

プロフィール

有限会社 髙橋自動車工業 店長

昭和52年いすみ市生まれ41歳。5児の父。千葉県自動車専門学校卒業後、日産系販売会社に7年勤務。幼少期より車やお客様との触れ合う機会も多く、そのころから「将来は家業を継ごう」と思っていた。そのため、商業系の高校に進学し、その後自動車専門学校で車の知識を学んだ。現在は有限会社髙橋自動車で店長として、車の販売から整備まで担当。

【髙橋自動車】

地元第一主義で昭和48年(1973年)創業。自動車整備工場は、自動車を整備販売修理するだけでなく、サービス業として常にお客さまのことを考え「どうすれば喜んで頂けるのか?」「どうすれば満足して頂けるのか?」を問うことを心がけています。「車の事で困ったら髙橋自動車に頼めば安心」と言ってもらえるお店を目指しています。

<インタビュー>

最初から「できない」と考えると先が無い。無理だと思っても、まずは挑戦

―車の仕事に就きたいと思った具体的な理由はありますか?

自分が生まれた時から父が自動車屋をやっていて、おじいさんは鉄工所をやっていました。おじさんは工務店みたいな仕事をしていたし、それを見てきて、小さいときから会社というものをやってみたいなと思っていました。また、小さい時から車が好きで、そのまま将来は自動車整備士になって今の家業を継ごうとなりました。

―学生時代に自動車関係以外の仕事につきたいと思ったことはありますか?

小学校の頃から自動車関係に進みたいと思っていたので、高校は商業系に行って、そこを卒業して専門学校に入ろうと中学の頃から思っていて、実際にその通りにしました。迷いはありませんでした。

―車の整備と販売ではどっちが楽しいですか?

若い時から車の整備が好きでした。でも今40歳なんですが、年を重ねるごとにお客様との触れ合いが増えてきて、販売の方が楽しいなと思っています。

―忙しいのはいつですか?

車検といって、車を整備する点検の時期があるんですが、皆さんが車を買うのは11月とかボーナスとか決算期の3月。そうすると整備の仕事も増えてきますので、11月とか3月が忙しいですね。

―車の修理でめんどうに思ったことはありますか?

めんどうというか、故障の原因が動物だったりするときは大変だなって思いますね。エンジンがかからないと言われて行ってみると、ネズミが線をかじっていたりとか。細い線を一本をかじっただけでエンジンがかからなくなるので、その一本を何時間もかけて探すのは大変。でもお客様に、よく見つけてくれたねと言われた時に楽しいなと思いますね。

―修理してる時に楽しいことはありますか?

直った時が一番楽しいです。何時間かけてわからないことが、こんなことが壊れてたんだって見つかったときはやっぱり楽しいですね。それをお客様に説明した時に、「よく見つけてくれたね」と言われた時に楽しいなと思います。車はモノなので心は無いですけど、それを使ってるのは人なので、お客様を大切にしようと心がけています。

―車の仕事についてよかったとこや悪いことはなんですか?

よかったことは、車を買っていただいた時にお客様が満足して、「ありがとね、買ってよかったよ」と声をかけてくれたり、ロードサービスといって車が途中で止まった時も対応しているのでその時に「助かったよ」と言ってもらえると、車屋さんをやっててよかったと思えますね。

―どのようなお客さまが来ますか?

私の会社は山田というところにあるんですけど、やはり高齢化の影響か、年齢の高い方がだいぶ多くなってきています。逆に免許取ったばかりの方も来てくれますけど、やっぱり高齢の方が多いですね。

―一番売れている車種はなんですか?

スズキのスペーシアです。今は結構軽自動車が売れてますね。

―台風が来るとき、代車などはどこにあるんですか?

工場の中に全部しまうんですけど、この間の台風でシャッターが全部飛んじゃって、中に全部しまっています。やっぱり台風は気を使いますね。お客様の車を預かっているので、工場の中にしまったり、シャッターが飛んでも大丈夫なようにしまっています。

―クレーム対応はどのようにしていますか?

お客様の話を聞くことですね。クレームというか、何に対して怒っているかをよく聞くことが一番大切だと思います。

―車についてどんなことを多く聞かれますか?

ナビゲーションの使い方をよく聞かれます。今いろんな機械が着いているので、「この操作はどうやるの?」とか。高齢者の方が上手く使えなかったりするので、そういう質問は多いですね。

―髙橋自動車が他の会社に負けていない部分はありますか?

「井の中の蛙、大海を知らず」っていうことわざがあるじゃないですか。「狭い井戸の中だけで天狗になって、外の広い海を知らない」という意味ですけど、その続きに、「されど空の高さなら知っている」という言葉を私のおじさんがよく言うんです。
地域密着でやっているんだったら、井戸の中のような狭い地域の中なんだけど、その中のことだったら何でも知ってるっていうような経営をしていけばいいんじゃないかって。地域のことなら何でも知ってるっていう強みはありますね。

―ライバルはいますか?

ライバルというか、いすみ市には以前まで5~6件の自動車屋さんがあったんですけど、今は3件ぐらいになっちゃって、ライバルというか共存共栄という感じですね。

―田舎とか地域に根ざすために心がけていることは?

会社は田舎の中にポツンとあるんですけど、会社って、地域社会に貢献してこそ意味があると思いますので、会社の経営自体をそのように考えてやっています。ほかにも、年に一回歌謡ショーがありまして、高齢者の方が歌を歌ったりするんですけど、社会福祉としてそのときにボランティアでちょっとした募金を集めさせてもらって、それを社会福祉協議会さんに寄付させてもらったりもしています。

―(先生)何十年も続いてることを承知で質問なんですが、移転を考えたことはありますか?

よく言われるんですけど、長く付き合わせていただいている今のお客様を大事にすることが何より大事です。あまり遠くなると今のお客様への対応が遅くなってしまうし。地域社会に根付くことが一番いいことだと思います。

―(先生)今ここの生徒たちが「ぜひ自動車工場に就職したい」と志望した時に、どういう人を採用したいと思いますか?

「車を直して」と言われて言われたことをやるのはもちろんのこと、人間力のある方を採用したいと思います。自分がお客様に何を期待されているのか、みんなも今周りのいろんな人に期待されてると思うんですけど、それを考えられる力のある方ですね。
例えば、お客様の車が入って来て、「ここ直しておいてよ」って言われて100%直すのは自動車屋として当たり前。さらに車の中が汚れてたら掃除して返してあげると、そこでお客様の期待値をちょっと超えられると。そういうことを心がけています。

―従業員は何名ほどいますか?

社長がいまして、専務。事務の方が1人、整備士の方が2人、店長の私です。

―お父さんの跡を継いで、自営の中での親子関係で悩むこととか大変なことってありますか?

そこまでないですね。私が就職した時にはもうお父さんではなく社長と呼ぶようにしましたし、家でもお父さんって呼ぶことは無くなっちゃいましたね。いつも社長って呼んでいます。初代が築きあげてきたものを継承しながらやっていくなかで、今があるのは初代の社長のおかげだという感謝を忘れずにいますね。

―先代のお父さんと自分の経営の違いはありますか?

先代は40年前に田んぼだったところを埋めて会社を作って、まだ会社じゃなかったと思うんですけどがむしゃらにやってきた。その頃が高度成長期ということもあって、黙っていても車はどんどん売れていくし、どんどん伸びていく分野だったと思うんです。でも今、車は一家に一台二台が当たり前になって、これ以上は増えないと思うんです。
その中でどうしたらいいかと言ったら、私が考えたのはお客様満足。今いるお客様を満足させて、満足していただいてうちのファンになってもらうというのが一番だと思いますので。
うちには営業員がいないんです。私は店長なので整備も営業もやるんですけど、その中で何が一番かというと、やっぱりお客様に満足していただいて自分の会社のファンになってもらって、「なんかあれば髙橋さんにお願いすれば?」って言っていただいた方が新たな新規のお客様になってくれたり。そういう縁を私は大事にしたいと思います。

―お客さまを満足させるために、なにに気を付けていますか?

まずは何でも挑戦してみることが大事だと思います。お客さまの要望も、ちょっと無理かもしれないって時もまずは「やります」って言うようにしています。「それはちょっとできません」とは言わないように。まず「やります」と言ってからその方法を考える方が道は開けると思うからです。最初から「できない」って考えちゃうと先はありません。無理かもしれないと思っても、やってみることが大事だと思います。

―将来はどんな車が出回ると思いますか?

自動運転車でしょうか。今後は手を離してアクセル離してボタンセットするだけで目的地に連れていってくれるような車がどんどん出てくると思います。

―パトカーとか消防車とか特殊な車の修理もしますか?

依頼があればやります。消防車は年に何回か、点検とか車検も普通の車みたいにあるので修理もします。水を出したりするのは別の分野なんですけど、その辺走ってる救急車も車自体は日産とかトヨタの、皆さんのお父さんが買っているような車と一緒です。その中身を全部取って救急車仕様に作り変えて売り出してるのが救急車ですので、基本的な車自体の構造は一緒ですね。

―田舎で仕事をしていて不便だと感じることはありますか?

「田舎だから不便」と感じたことは今の所ないですね。ただ、田舎だからってわけじゃないですけど、自動車業界全体で車の保有台数は減ってきています。高齢者は免許を返納したあと買い物も行けないし病院にも行けなくなっちゃうと困る。そういう場合に電動三輪車というのも販売してるのでお勧めすることもあります。

―今まで車の修理をしてこれは直せないというのはありましたか?

台風で川が氾濫して、車が置いてあるところまで水がきちゃって、車の半分くらいまで水に浸かっちゃったときは直せないと言いました。水に浸かっちゃうと、一時的には直るんですけど一年後とかに必ず故障が出てくるので、そのときは色々考えて「諦めた方がいいかもしれないです」とお勧めしました。

―自営業のメリットとデメリットを教えてください。

メリットは、働いた分が自分のところの利益になるし、やればやっただけ自分に還ってくるのが自営業だと思います。その反面、やらなければそのまま自分に跳ね返ってくるので、リスクもあります。

―中古を買う時にどこを見ればいいですか?

外見って大体綺麗になってるんですよ。外を一番磨くので外から見ると何もない綺麗な状態になってると思うんですけど、ボンネットを開けてどのくらい綺麗になってるかとかですね。事故した車は価値がすごく下がっちゃうのでわからないように直したりするんです。そういう時によく、修理されてないかな?ってよく見たほうがいいですね。

―今まで赤字の時はありましたか?

今のところないですね。プラスマイナスゼロということはあったんですけど、そんなにすごく赤字になって困ったときはないですね。

―ガソリンのレギュラーとハイオクの違いが分からないので教えていただけますか?

原料は同じですけど、簡単に言うとその綺麗な部分を使ったのがハイオクで、それよりも少し不純物が混ざったものがレギュラーガソリンです。綺麗なところだけ使うとよく燃えるのでエンジンの出力にも影響します。スポーツカーとか高級車はみんなハイオクガソリン入れて、それ以外の車はレギュラーガソリンというように分かれていますね。

―新しく挑戦したいことはありますか?

今のお客様を大事にするということは守りながらも、これから電気自動車とか自動運転が増えてくると思うんですよ。そういうものに対応した整備士になっていくことに挑戦したいと思います。
勉強しないと時代にどんどん置いていかれちゃうので、従業員の方とみんなで勉強していきたいと思います。

―仕事が休みの時はどのようなことをしていますか?

なるべく子どもと遊ぶ時間を増やしたいと思っているので大体子どもと遊んでいますね。上の子たちは女の子なので一緒に買い物行ったりとか。一番下の子とは一緒にサッカーして遊んでいます。

―自分の子どもにも同じ仕事についてもらいたいと思っていますか?

うちは女の子が4人で男の子が1人なんです。今は女の子の整備士もいますし、車の販売に興味がある人もいるし、車の保険などの仕事にも興味があればその道に進めます。無理に継いでもらいたいという気持ちは無いですけど、そういう仕事に興味があればいいですね。

(インタビュー:2018年度千葉県立大原高校3年生選択授業「一般教養」選択生徒)

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元々すべて自己資金で始めた活動ですが、地域にお金を回す事で当活動を継続できたらと思い、地域の方々にご協力頂き、「返礼品つき寄付金支援サイト」をつくりました。返礼品はすべて房総のとっておきの品ばかりです。どうぞご支援ご協力頂ければ幸いです。
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