ふたつの仕事を同時に両立~(有)岬石油・ワイルドキッズオートキャンプ場 専務取締役 橋本安史さん

橋本安史さん

プロフィール

(有)岬石油・ワイルドキッズオートキャンプ場 専務取締役

千葉県一宮町出身。平成7年に結婚、妻の実家の家業であるガソリンスタンド、岬石油を手伝い始める。それ以前は大学を卒業してからサラリーマン的な仕事に従事。元来、商売や会社に興味や憧れを持っていた。結婚の数年後、都会の人々を受け入れ、いすみの自然を十分に満喫してもらおうと、義父がオートキャンプ場の開業を提案。当時、オートキャンプ場は県内に数えるほどしかなく、商売としても十分に成り立つだろうと、開業に至った。

【岬石油】

1974年オープン。1995年に現在の椎木交差点に移転。車等の燃料の販売、洗車及びパンク修理やオイル交換などが主な業務。

【ワイルドキッズ岬オートキャンプ場】

山、湖、海に囲まれた最高のロケーションで、散策遊歩道、子供広場、釣り、バードウォッチング、バーベキューが楽しめる。東京、埼玉、神奈川など県外からの来客も多い。

<インタビュー>

「会社の経営は、自分にすべての責任がかかってくるので刺激的です」

―岬石油とワイルドキッズを掛け持ちしようと思ったのはなぜですか?

元々私は岬町の商工会館の職員として働いていました。今の岬石油は私の義理の父がやっていて、私も会社経営をしてみたいという憧れがありましたので、結婚をきっかけに岬石油で仕事をすることになりました。
その後、20年前くらいに義理の父から「オートキャンプ場をやってみよう」という提案がありました。たまたまうちは不動産をやっていて、いすみの海の方に土地があったので、そこと、近隣の土地も少しお借りしてやってみようということになったんです。

―なぜ会社を経営するということに憧れがあったのですか?

会社の経営は、人に使われないということがまず魅力です。それから、経営は自分の手腕が明確に表れます。自分が間違えれば会社は傾くし、いいことをすれば会社は上向く。自分にすべての責任がかかってくるので刺激的だし、うまくいった時はうれしい。それが魅力でした。ほかにも、ある程度時間的に拘束されないという面も魅力でした。

―オートキャンプ場を作ろうと言った義父の提案に反対した人はいましたか?

周囲の人も含め、反対する人は多かったです。私もです。なぜかというと、山を切り開いて、管理棟を作って、お風呂を作って、炊事場を作って、トイレを作って、さらに芝生を張ったり区画をつくったり、かなりの費用がかかると思ったからです。でも、もっと経営的に上を目指していかなければいけないという理由で、チャレンジしてみようと考え直しました。

―オートキャンプ場の経営で大変なことはありますか?

ガソリンスタンドで給油をしながらも、電話がかかってきたら予約を受けますし、そういう大変さもあります。また、オートキャンプ場のお客さんは近隣の方だけじゃなくて、千葉、埼玉、遠い人だと東海地方から来るお客さんもいます。
そういう遠方から何時間もかけて、費用もかけてわざわざこの岬の地まで来ていただいたお客さんに対して、いいところだったと思ってもらう努力をしています。常に来てもらって喜ばれるキャンプ場作りをしなきゃいけないという中で頑張ってます。

―キャンプ場の整備で大変なことはありますか?

まず自然が相手です。なので草も伸びます。木も枯れます。葉っぱも落ちます。来たお客さんは草ボーボーのところでテントを張っても気持ちよくないです。来て気持ちいい素敵なキャンプ場だったと思われるためにはそういうところを常に綺麗にしておかなきゃいけない。
キャンプ場にはトイレとか炊事場、お風呂、管理等という受付したり売店があったりするところもあるんですけど、そういうところも常に清潔にしておかなきゃいけません。
いくら芝生が綺麗に生えてて、そこが綺麗でもトイレが汚かったらキャンプ場のイメージがガタ落ちになっちゃいます。炊事場はお客さんが入ると、茶碗とか鍋洗い物するので結構汚れます。そのままにしておけば次使おうとしたお客さんはイメージが悪くなっちゃいますので、「常に清潔にすること」「綺麗にすること」なおかつ「自然は守りながら」。その3つをコンセプトで頑張るようにしてます。

―オートキャンプ場のお風呂の温度は何度ですか?

夏は38度くらい。冬は40度くらいにするかな。夏は日焼けしたお客さんが多いので、あまり熱くすると痛がってしまうから。だから、温度は夏は少し低め、冬は湯冷めしないように熱めにしています。

―「ワイルドキッズ」という、オートキャンプ場の名前の由来はなんですか?

お客さんは大体都会の方から来ます。都会のマンションとかで生まれ育った子供達が多いので、親の考えとしては自然と触れあわせたいんじゃないのかなと。だから、キャンプ場を選ぶ際に名前を聞いただけで自然の中で子供達が遊べるイメージがわくんじゃないかと考えてワイルドキッズと名付けました。

―オートキャンプ場には最大どのくらいの人が来ましたか?

キャンプ場とオートキャンプ場と2つあるんです。車を駐車場にまとめてとめて、そこから歩いて荷物を持ってテントを張ったりするのは普通のキャンプ場。オートキャンプ場というのは車の横ですぐできる。
車の横にテントを張るんですけど、エリアがないとどこまで自分が使っていいのかわからない。それを区画、英語で言うとサイトというんですけど、ホテルでいえば一部屋ですね。屋根のない部屋、そういう感じです。

うちのワイルドキッズは全部で110区画あります。だいたい平均お父さんお母さん子供さん二人もしくは三人。だいたい四、五人の家族。ほとんどの、九割五分以上がファミリーです。お父さんお母さん、お子さんたち。だいたいこのグループできます。だいたい一区画四、五人。110区画ありますんで、忙しい時は全部埋まりますからだいたい500人ぐらいは来ます。

どういう日に来るかというと、一番忙しいのはゴールデンウィーク。ほぼいっぱいになります。あと海の日、三連休ですね。三連休があるときはだいたい満員になります。ちなみに今月も三連休がありますけど、その日も満員です。満員の日はだいたい四、五人かける110区画なので、500人前後ですね。

―今もキャンプ場は人気ですか?

東日本大地震があったときは津波を怖がるお客さんがいらっしゃって、海のそばのキャンプ場なので来場者が結構減りました。電話予約の際も津波は大丈夫ですか?という問い合わせが結構ありましたので、その頃は結構減りましたけど今は人気です。うちのキャンプ場は避難場所になっているくらいの高台なので津波は大丈夫です。

―キャンプ場で近所への騒音とかはどう対処していますか?

基本的に夜10時以降は静かにするようにお願いしています。あと10時以降もし騒いでいる方がいる場合は義理の父が管理棟に泊まってますので巡回して注意して静かにしていただけるようにお願いしてます。また夏は花火とか音が出る花火とかは禁止ということで、やるなら他のところでやってもらうようにお願いしてます。ただどうしてもお酒が入っちゃうと賑やかになっちゃう人がいますけど、うるさい時には注意するように必ずしています。

―ワイルドキッズの年収はいくらですか?

想像してもらいましょう。でもわからないかな。お客さん家族の基本的なパターンというのが、お父さんお母さんお子様2、3人。その方が一泊するのだいたい8千円くらいいただきます。うちは110区画あります。だいたい二泊三日いっぱいになると150万円位の売上はあります。あとはご想像にお任せします。

「同じことをやっても、気持ちひとつで結果は全然違ってくる」

―ガソリンスタンドの仕事で大変なことはなんですか?

ガソリンというのは危険物です。たとえばストーブの灯油を買いに来たお客さんに間違ってガソリンを入れてしまったら一大事になってしまいます。あるいは、タイヤ交換を間違えてしまうと、お客さんが車で走っている途中でタイヤが外れてしまいます。生命の危険にもなります。そういう危険なものを扱っていますので、間違いがあってはいけないということは必ず気をつけてるようにします。間違えたらごめんなさいで済む商売ではないので。

―キャンプ場とガソリンスタンドと2つの仕事をして、家族との時間は取れますか?

取れます。基本のスタイルは朝7時過ぎにガソリンスタンドを開けます。多少休憩しまして夜8時に閉めます。それが通常です。キャンプ場を手伝う時は忙しい時。ゴールデンウィーク、お盆、海の日、三連休なんかはガソリンスタンドをやりながら受付もするんですけど。毎日毎日キャンプ場とスタンドを行き来しているわけではなくて、キャンプ場に実際に私が出向くのは忙しい日だけ。お客さんがある程度入ってる日に受付作業をしにいくので、だいたい夜には帰って来ますから家族との時間は夜8時以降は作れます。

―ガソリンスタンドとオートキャンプ場の仕事はどっちが大変ですか?

どっちも大変です。ただ私は基本的にガソリンスタンドの経営をほとんど任されています。
オートキャンプ場の方は義理の父が携わってますので、逆に私はそっちを手伝うという感覚なので、やっぱり大変と言えばガソリンスタンドの方が大変です。
仕事の作業的にも大変ですし、ガソリン業界というのは頭打ちになってますから、その中で会社を運営していくために、お客さんを確保する努力をしなければいけない。

―ガソリン業界の将来はどうなっていくと思いますか?

正直先行きはあまりよろしくないと思います。今、省エネ化でハイブリットカー、ガソリンと電気を併用したり電気自動車とか、そういうのが出て来てます。そうするとガソリンの消費量が少なくなりますし、石油も限りある資源。地球温暖化とか環境問題もあるし、そういう方向性に向いてますので、ガソリン業界もその波には逆らわないだろうというのが私の見解です。

―仕事とは橋本さんにとってどんな存在ですか?

まず一般的に生きてくためには仕事をしないと食べていけないのでせざるを得ないと思いますけど。
ただ漠然と仕事をしてるんではなくて、「自分が上を目指す」というとかっこいいかもしれないんですけど、自分のレベルをもっと上げていきたい、そういうことの為に仕事があると思います。
ただ任された仕事をしているだけだと何も得るものはないんですけど、仕事をすることによって自分のいろんなレベルを上げられるものだと思っています。

―仕事をするにあたって大切なことはなんですか?

考えて仕事をすることです。たとえばガソリンスタンドで車の窓ガラスをふいていますよね。窓をふくということは作業ですが、その本来の目的は、窓をきれいにすることです。だからスタッフに、「窓をふいてください」と私が指導しても、考えていない人はただなでるだけ。でも考えて仕事をすると、きれいにすることが目的だとわかるので、窓ガラスはきれいになります。
微妙な違いかもしれないけどその気持ちひとつで、結果が全然違ってきます。もちろんきれいになればお客さんは喜びます。そうやって、常にこれは何のためにやっているのか?と考えて仕事をする。そうすると一番充実した仕事ができます。

―お客さんからもらった言葉で一番何が嬉しかったですか?

ガソリンスタンドで嬉しかったのは、車にトラブルがあったときに整備して、そのあとガソリンを入れに来てくれて「こないだはありがとう」と言っていただいたこと。またガソリンを入れに来てくれたということが状況も含めて嬉しかったです。
キャンプ上で嬉しかったのは、「こないだ来て良かったからまた来ました」という言葉。また来てくれたこと自体も嬉しいです。

この商売で何が大切かというと、リピートしてくれるお客さんがいっぱいいないといけませんので。ガソリンスタンドは9割近くリピートのお客さんです。ワイルドキッズもリピーターのお客さんが非常に多いです。今年のゴールデンウィークに帰ったお客さんが来年のゴールデンウィークの予約をしていきます。来年のゴールデンウィークは10連休とか言ってますけどもう結構埋まっちゃってます。そのくらいリピーターが多いので、そういう方は非常に大切にしなきゃいけないし、こちらも気に入ってもらってまた来たよと言ってもらえた言葉はすごく嬉しいです。

(インタビュー:2018年度いすみ市立岬中学校1年生)

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