授業⑫助産師さんにインタビュー!

今回のテーマは「命」

今日は、年末に準備を進めてきた取材の当日。ゲストは、助産院「ハッピーマンマ」の羽鳥さんです。

今回のテーマは「命」。

重たい内容だけれども、人間誰もが向き合う、大事なテーマ。「命」にかかわる探求テーマは、どれも深いものばかり。

「命」に違いはあるの?
「命」は何でできてるの?
「命」はいつまで受け継がれるの?

子供も大人も、みんなで考える「テーマ」です。羽鳥さんがどのような受け答えをするのかも気になります。

早速取材スタート!

羽鳥さんが拍手で迎えられました。
中学生のころは勉強が好き、知ることが好きだった羽鳥さん。

「みんな、勉強は好きじゃない?好きな人いるでしょ?」

・・・中にはうなずく生徒もいましたが、渋い顔をする生徒多数。ただ、今までの授業の取り組みを見ている限り、探求心旺盛で「知る」ことに貪欲で熱心な様子は見ているので、本当は勉強が好きなのでは?勉強は、国数英だけでないですからね。

助産師不足の「いすみ」で、助産師がいること

「羽鳥さんは何故いすみに?」

「田舎生活への憧れ」があった羽鳥さん。東京の病院で働いた経験を生かして、田舎で自分で助産院をするためにいすみにやってきました。

「産後のストレスで自殺した人はいますか?」

非常にストレートでなかなか聞きづらい質問をぶつける生徒達。その質問にも羽鳥さんは丁寧に答えます。

実際、お母さんの10人に1人は「産後うつ」になってしまうそう。

お母さんの表情が全くない、育児が辛い。でも、頼りにしたいお父さんが仕事でいない。赤ちゃんはずっと泣いている。そういったことでお母さんは精神的に追い込まれてしまい、お母さん自身を傷つけてしまったり、時には赤ちゃんに当たってしまったりするそうです。

羽鳥さんは、お母さんと赤ちゃんをサポートするために、「赤ちゃん訪問」といって、産後のお母さんのお宅を定期的に訪問して、メンタルのサポートを行っているとのこと。

羽鳥さんの心遣いが、お母さんと赤ちゃんの「心の支え」になっていることが伺えました。

お母さんと赤ちゃん、どちらの命を選ぶ?

生徒:「もし、お母さんと赤ちゃんの命のどちらかしか救えない時、どちらの命を救いますか?」

羽鳥さん:「究極の選択だね、みんなはどう思う???」

羽鳥さんは生徒達に質問を投げかけます。私だけではなく、みんなも考えてほしい、という「思い」が伝わってきました。

生徒達から、「選べない!どっちも救いたい!」という声が上がりました。

そう、医者の使命は、お母さんと赤ちゃん、どちらの命も救うこと。羽鳥さんはそのように答えました。羽鳥さんの、「助産師」としての「使命感」を強く感じます。

実際、お母さんと赤ちゃん、どちらも命の危険があったときに、1人では救うのが難しいので、「2人以上」で分娩介助することが絶対だそうです。

出産は常に「危険」と隣り合わせ。
「鼻からスイカが出てくる」と表現されるほど、お母さんは本当に大変な思いをして赤ちゃんを産みます。
出産には平均でも半日かかる、長丁場。だから、しっかりと呼吸すること、食事をとることが大事になってきます。

「お母さんをやさしくさすってあげてね」

お母さんの体をさすると、「愛情ホルモン」というものが出て、痛みが和らぐのだとか。

実際に、生徒たちが隣の人の背中をさすりあいました。なんだか安心して、心の緊張が和らいでいく感じ。「愛情ホルモン」を体感することができました。

赤ちゃんと一番最初に目が合うのが助産師

生徒:助産師の「やりがい」は?

羽鳥さん:「お母さんには申し訳ないけど、赤ちゃんと一番最初に目が合うことかな」

そう答える羽鳥さん。

赤ちゃんの体を取り上げ、一番最初に赤ちゃんと目が合うのは、助産師の「特権」。それを「ありがとう、幸せ」に思うと、落ち着いた表情で伝えます。

本当に「幸せ」なんだな、という感情が伝わってきます。

「お母さんや赤ちゃんの苦しい様子を見ると、自分も苦しくなる。逆に、お母さんや赤ちゃんが幸せだと、自分も幸せ。」

羽鳥さんと、お母さん、赤ちゃんの「気持ち」は一つ、というのが伝わってきます。

「助産師は定年が無いので、一生涯続けられる。」

80歳でも普通に現役で助産師さんがいるほど、生涯にわたって続けられる仕事というのも、助産師の魅力。
分娩介助以外にも、講演活動や、お母さん向けの出産教室など、いろいろな仕事のやり方があるとのこと。
羽鳥さんのような、いつも「赤ちゃんとお母さんの味方」になってくれる助産師さんが、一生涯助産師さんを続けられると聞いたら、赤ちゃんもお母さんも安心です。

羽鳥さんが考える、「命」の探求テーマ

生徒:「なぜ命にはモノを動かす力がある?」

羽鳥さん:「生きているから、心があるから、動くことができるんじゃない?」

生きているだけで、受け止めてくれる人はいる。赤ちゃんを抱っこするように。羽鳥さんの言葉に心を打たれました。その言葉で、励まされ、自身が持てた生徒も多いはずです。

生徒:「命はいつまで受け継がれる?」

羽鳥さん:「人類が存在するまで一生かな。」

命は、人類がある限り、受け継がれる。まさに、「命を受け継ぐ」ことを仕事にする助産師さんが言うからこそ、すごく心に響きます。

今回の取材は、単に「助産師」の仕事を理解することができただけではありません。

「『命』とは何なのか。」

生徒だけでなく、先生も、僕たちも、みんなで考えるテーマに向き合うことができました。

テキスト:椎葉康祐